アリス・カディー(ディエゴ・ガルシア島)、スワミナサン・ナタラージャン、BBCニュース
イギリス政府は8日、インド洋にある英米軍事基地内に何年も拘束されている数十人の移民に対し、ルーマニアへの一時的な移動を提案した。
インド洋のチャゴス諸島のディエゴ・ガルシア島には2021年、迫害から逃れたスリランカのタミル人数十人が到着し、亡命を求めた。現在、フェンスに囲まれた島内のキャンプに収容されている。
この島の特殊な地位が、長期にわたる法的な論争につながっていた。イギリス政府は、彼らをイギリスに受け入れることで「裏口の移民ルート」を生み出す危険性があるとしていた。
チャゴス諸島は元々、イギリス領だったモーリシャスの一部だった。イギリスは1965年にチャゴス諸島をモーリシャスから分離し、イギリス領インド洋地域(BIOT)の一部とした。
一方モーリシャス政府は長年、1968年にイギリスから独立した際、独立と引き換えにチャゴス諸島を手放すことを不法に強いられたと主張してきた。
しかしイギリスは今月3日、ディエゴ・ガルシア島を含むBIOTの主権をモーリシャスに譲渡すると発表。ただし、軍事基地は同島に残ることになった。
この発表後にイギリス当局が提示した条件によると、ルーマニアに移送される移民らは、6カ月後にイギリスに移住できる可能性がある。
またBBCの取材によると、一部の人々には、彼らが迫害を受けているというスリランカへの帰還を促す、金銭的優遇措置が提供されるという。
英外務省の報道官は、内閣が移民らの福祉と「イギリス領土の境界の完全性」を守る解決策を見つけるために取り組んできたと述べた。
また、移民らの法的請求が処理される間、最も弱い立場にある移民を移転させることで、「より大きな安全と幸福」が提供されると付け加えた。
現在、ディエゴ・ガルシア島には56人のタミル人が残っている。また、8人が自傷行為や自殺未遂の後に治療を受けるために移送され、西アフリカのルワンダにいる。
移民のほとんどは、国際保護の申請に対する決定を待っているか、却下に対する不服申し立てを行っている。現時点で計8人が国際保護を認められている。
BBCは先月、ディエゴ・ガルシア島への立ち入りを特別に許可された。同島では、英民間警備会社G4Sが警備するフェンスに囲まれた小さなキャンプで、移民らが不法に拘束されていたのかをめぐって裁判が開かれていた。BBCはそれを取材した。
判決は間もなく出される見通しだ。
BIOTのニシ・ドラキア・コミッショナー代理は8日朝、キャンプ内の移民らに対し、イギリス政府は「個人ごとに異なる提案を行う」ことを決定したと説明した。
「一部の人々には別の安全な国への提案が、また他の人々には自主帰国への提案が送られるだろう」
「この発表は、誰もがすぐに島を出なければならないという意味ではない。皆さんには、この申し出と今後のステップについて検討する時間がある」
移民の一部を代表するイギリスの法律事務所の弁護士は、「キャンプは遅滞なく閉鎖されることが不可欠だ」と述べた。また、イギリス政府が「すべての個人および家族に対して、長期的に実行可能な解決策を見つける」べきだと付け加えた。
BBCが取材した移民によると、国際保護が認められた移民や、子どもがいる家族の移民は、ルーマニアで国連が運営している「安全センター」に最長6カ月間滞在することが提案される。その間にイギリス政府が「耐用のある解決策」を考えるという。
英政府から移民への書簡には、提示された解決策を受け入れない場合はイギリスに移送されると書かれていた。
一方、国際保護申請が通らなかった移民や、キャンプ内に家族がいない移民には、スリランカへの帰還に向けた優遇措置が提示されている。
これには3000ポンドの金銭に加え、3年間の医療保険、最長3年の住居保障、職業・訓練・教育の機会などが含まれるという。
ただし、保護申請が却下された人々には、まだ法的手段が残っているとみられる。
BBCがキャンプを訪れた際、男女が高さ約2メートルのフェンスに沿って並び、テントの外で手を振っていた。
5~6人の男性が寝泊まりするテントの一つに入ると、ある男性がベッドの上のパネルを持ち上げ、ネズミの巣を見せてくれた。
キャンプ内には、「私たちはおりの中の動物のように扱われている」、「ここはひどい場所だ」といったスローガンが書かれた手書きの看板が貼られていた。
最近では、独身男性と家族連れを隔てるために、内部フェンスが建てられたという。
移民を代表する弁護士が雇った独立系のソーシャルワーカーは、昨年末のキャンプの状況を「精神衛生上のパンデミックが発生している」と表現した。
法廷の外では、男性、女性、子どもたちが自傷行為の痕を記者に見せた。
裁判所がキャンプを訪問した際、ある女性は、テント内で娘が他の移民に暴行されたと訴え、涙を流した。これは、いくつかの性的暴行の訴えのうちの一つだ。
キャンプでの犯罪容疑で起訴または有罪判決を受けた3人の男性は、島の警察署の隣の部屋に拘束されている。
国連と赤十字社の代表者は共に、以前からこのキャンプの利用と状況について懸念を表明していた。
昨年末の訪問後、国連は、このキャンプは「明らかに長期的な居住には適していない」とし、他の移民による児童への性的暴行や嫌がらせの報告について特に懸念を表明した。
インド洋に位置するディエゴ・ガルシア島は他の人口密集地から何百キロも離れており、アメリカにとって重要な戦略的拠点と見なされている。
この島へのアクセスは厳しく制限されており、長い間、うわさと謎に包まれていた。イギリス政府は2002年にアメリカの移送機2機がこの島に着陸したことを確認しているが、その際、飛行機から降りた被収容者はいないと述べている。
イギリス政府の弁護士は今年初め、BBCが裁判を取材するために島への立ち入りを許可することに反対したが、最高裁は「正義は行われるだけでなく、行われているように見えなければならない」としてBBCの主張を認めた。
ディエゴ・ガルシア島のほとんどの人員と資源を管理するアメリカはその後、移民を代表する弁護士とBBCの立ち入りを阻止すると発表した。また、イギリスの判事を含む審問の出席者全員への食料、交通手段、宿泊施設の提供を差し控えるとも発表した。
その後、アメリカとイギリスの当局は裁判の実施を許可したが、制限付きだった。G4Sの追加の職員が派遣され、BBCと弁護士の警護にあたるとともに、島内の立ち入りを制限した。