2024年10月28日(月)

生成AI社会

2024年10月25日

広告収入を目的に、大量生産される質の低い記事

 詐欺ばかりではありません。広告収入を稼ぐために、たとえ嘘が混じっても大量に記事を作ることが優先されています。

 生成AIが出てくる前の例としては、DeNAが運営していた医療健康情報サイトWELQのことがあるでしょう。サーチエンジンにひっかかりやすい言葉を使って質の低い記事を大量に作り、サイトにのせることで広告収入を上げようとしました。

 クラウドソーシングを使い、1文字1円以下のきわめて安い価格で専門的知識のないライターに記事を書かせており、ほかのサイトからの文章がコピペされていたり、あやしい内容が含まれたりしていました。

 医者によるチェックもなく、ウェブページが表示される回数(PV)を増やして収益を得ることだけが優先されました。こうしたことが人の健康や命に直接的に関係する医療健康情報サイトで行われたのです。

 生成AIは、こうした行動を後押しするでしょう。これまでよりも圧倒的なスピードで文章を生成できるからです。人手もそれほどかかりません。平和博のまとめによりますと、記事の本数が飛躍的に増えています(*5)。

 ニュースサイトのように装ったサイト「ワールド・トゥデイ・ニュース」では、1日あたり平均で1200件の記事を公開しています。ニューヨーク・タイムズは1日約150件の記事を公開していますので、「ワールド・トゥデイ・ニュース」はその8倍の記事を作成しているという計算になります。

 また、別のサイトでは「イングリッド・テイラー」の名前がついた署名記事が1時間あたり4.5本のペースで公開されているといいます。生成AIを使いコンテンツを自動生成させ、それに広告をのせて収入を稼いでいます。

 ニュースガードによりますと、このような生成AIによる記事作成のニュースサイトはすでに840にのぼり、それらのサイトでは人のチェックがほとんど、もしくはまったくされていません(*6)。

*5 平和博(2023)「1週間で記事8,600本、「AIコンテンツ工場」がネット広告費を飲み込む実態とは?」『Yahoo!ニュース』(2024年5月31日アクセス)

*6 NewsGuard (2024) “Tracking AI-enabled Misinformation”(accessed 2024-05-31)


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