2024年10月28日(月)

脱炭素・脱ロシア時代のエネルギー基礎知識

2024年10月23日

 燃料も準備しておく必要がありますが、大量輸送が前提の石炭、液化天然ガス(LNG)を用意しておくのは困難です。石油火力が予備電源の対象になると考えられますが、発電所で使用する大量の重油を直ぐに手当てするのも簡単ではありません。

 予備電源制度では発電設備を手当てできませんでした。データセンター、半導体工場の電力需要にどう応えればよいのでしょうか。

GAFAMが乗り出す原子力発電

 10月15日に日本経団連が電力問題に関するアンケート結果を公表しました(経団連:電力問題に関するアンケート結果 (2024-10-15) (keidanren.or.jp))。製造業と非製造業が約半数ずつの167社が回答しています。今後5年から15年後の電力需要については、大幅に増加と増加が計46%、減少が18%でした。

 電力供給の課題として、価格(41%)、脱炭素(25%)、供給量(18%)があげられています。需要量が増え課題がある中で、86%が原発再稼働、68%が建て替え、新設の必要性を認識しています。

 電力需要の増加が見込まれる中で、米国でもGAFAMと呼ばれるクラウド企業は相次いで脱炭素安定供給電源として原発からの電力購入あるいは設備への投資を発表しています。

 マイクロソフトは45年の運転を終え19年に廃止されたスリーマイル島原発1号機88万kWを、28年に再開させ20年間にわたり電力を購入する契約を締結したと9月に発表しました。

 グーグルは、10月14日に小型モジュール炉(SMR)を開発するカイロスパワーから50万kW相当の電力を購入すると発表しました。1号機は30年までに運転開始予定でさらに35年までに開発予定のSMRから電力を購入する契約です。

 アマゾン・ドット・コムは、10月16日にSMRからの電力購入と開発支援、投資の契約を複数の企業と締結したと発表しました。

 米国ではデータセンターによる電力需要増に応えるため、クラウド企業は相次いでSMRを中心とした原発の利用に踏み切っています。

 日本も「予備電源制度」だけではなく、安定的な電力供給の仕組みを早く作り上げる必要があります。安定電源新設の見込みがなければ、データセンターは国外に設置されるでしょう。

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