2024年12月4日(水)

未来を拓く貧困対策

2024年10月24日

NHKスペシャル「生活保護3兆円の衝撃」

 その声をいち早く取り上げたのも、NHKである。

 以下は、11年9月に放映されたNHKスペシャル「生活保護3兆円の衝撃」の番組紹介のリード文である。若干長いものだが、当時の社会背景や番組としてのメッセージが端的に示されているので、省略せずに紹介する。

 凄まじい勢いで増え続ける生活保護受給者。今年4月末の受給者は、全国で202万人を突破。世帯数で見ると146万世帯を超え、終戦直後の混乱期を上回り過去最多となった。給付額は3兆4千億円に達しようとしている。急増の背景には、リーマン・ショックを受け、2010年春に厚生労働省が65歳以下の現役世代への生活保護支給を認めるよう全国の自治体に促したことがある。
 全国一受給者が多い大阪市では、市民の18人に1人が生活保護を受け、今年度計上された生活保護費は2916億円、一般会計の17%近くを占めている。危機感を抱く大阪市は「生活保護行政特別調査プロジェクトチーム」を設置、徹底的な不正受給防止にあたると共に、受給者の就労支援に乗り出している。しかし巨額の生活保護マネーに群がる貧困ビジネスは悪質化、肥大化し、摘発は進まない。また、就労意欲の低い受給者に職業訓練や就職活動を促す有効な手立てがない中で、不況下の再就職は困難を極めている。
 東日本大震災の影響で今後受給者が更に増えるとも言われる中、今年5月から、国と地方による生活保護制度の「見直し」に向けた協議が始まっている。番組では非常事態に陥った大阪の生活保護をめぐる現場に密着。「働くことができる人は働く」という日本社会の根幹が日に日に毀損されていく状況をどうすれば止められるのか、そのヒントを探る。(出所:NHKスペシャル「生活保護3兆円の衝撃」)

 番組は、大阪市の全面協力のもとで制作されている。平松邦夫大阪市長(当時)も出演し、市政において生活保護が大きな政策課題であることを訴えている。

 「『働くことができる人は働く』という日本社会の根幹が日に日に毀損されていく状況をどうすれば止められるのか」という問題提起は、07年のNHKスペシャル「ワーキングプア」とは対極に位置するものである。

「生活保護バッシング」と法改正(2013年)

 自治体における負担感が増大するなかで、生活保護に対する不満は現場でくすぶっていた。不穏な空気のなかで、12年4月、年収数千万円ともいわれる芸能人の母親が、生活保護を利用していることが発覚する。

 週刊誌『女性セブン』によれば、かの芸能人は飲み会の席で次のように発言したと言われている。

 「いま、オカンが生活保護を受けていて、役所から“息子さんが力を貸してくれませんか?”って連絡があるんやけど、そんなん絶対聞いたらアカン! タダでもらえるなら、もろうとけばいいんや!」

 13年の「生活保護」報道の第2の山は、この件をきっかけに広がった「生活保護バッシング」がもたらしたものである。

 「普通の人よりも収入があるのに、親の援助をしないのは何事か」という扶養に関する問題はもちろん、「現在の生活保護は不必要な人まで利用させている『甘さ』があるのではないか」「そもそも生活保護費が高すぎるのではないか。庶民はもっと苦しい生活をしているのに」といった声がメディアにあふれた。


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