2024年11月1日(金)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2024年11月1日

(移民問題)

 「オルバンは、ハンガリーは『その国境を守っており』、ハンガリーでは『犯罪人は拘留されている』と述べた。しかし、昨年、ハンガリー当局が密輸と人身売買の犯罪人を刑期が終わる前に釈放した事実にこの発言はどのように適合するのか訝しく思う。

 これはヨーロッパの不法移民と戦うことにならない。これは欧州連合(EU)を守ることにならない。これは隣国とのフェンス越しに問題を投げるだけのことである」。

 「我々は皆、域外国境をより良く守りたいと思っている。しかし、それは組織犯罪に共同で対処し我々の結束を示してのみ、成功するであろう。誰が域内に入ることを認めるかについて言えば、ハンガリー政府が追加的なセキュリティー・チェックもしないままロシア国民をEUに招き入れるようなことが、どうして有り得るのか?

 ハンガリーの新たなビザのスキームはハンガリーだけでなくすべての加盟国にとっての安全上のリスクとなる。また、ハンガリー政府が中国の警察にその領域で活動を許すようなことが、どうして有り得るのか? これはヨーロッパの主権を防衛することでない。外国の干渉のための裏口である」。

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ハンガリーと対立する3つの要因

 10月9日、欧州議会においてオルバンも出席してハンガリーがEU議長国を務める7月以降本年後半の課題について議論が行われた。ハンガリーとブリュッセルの対立が要因で、時期が今にずれ込んだものらしい。

 フォン・デア・ライエンはオルバンに続いて演説したが、オルバンに面と向かって遠慮会釈なく非難を展開したのは、ブリュッセルでオルバンに対する苛立ちが蓄積している現れかと思われる。その要因はいくつかある。

 第一に、ロシアの凍結資産を使ったウクライナ支援である。10月9日、EU理事会はG7が合意した最大450億ユーロ(500億ドル)の対ウクライナ融資に対するEUの貢献分として最大350億ユーロの融資を行うことで合意した(今後、欧州議会の承認を要する)。特定多数決で合意を達成しハンガリーの拒否権を回避したが、ハンガリーはルール違反だと不満を表明している。

 しかし、問題がもう一つある。それは、ロシア資産(大部分はEUの管轄下にある)の凍結というEUの制裁自体は6カ月毎に更新を要することになっており、そのような先行き不確実な状態では、G7による融資はロシア凍結資産が生む利子収益で償還されるという前提が崩れかねないため、米国が融資への参加の可否およびその規模を決め得ないとしている問題である。


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