2024年11月21日(木)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2024年11月1日

 EUは6カ月を36カ月とする解決策を目指しているが、この変更には全加盟国の賛成が必要とされている。問題は、ハンガリーが対ロシア制裁に関する米国の次期政権の方針を見極める必要があるとして、この決定は11月の大統領選挙まで待つべきだと主張していることである。妨害としか思えず、トランプの立場を慮っているとしか思えない。

 第二は、フォン・デア・ライエンも言及しているが、ハンガリーのNational Cardと称するスキームである。就労許可が容易なビザのスキームのようで、元来、対象はウクライナとセルビアの市民が対象だったが、7月にロシアとベラルーシおよびバルカン4カ国にも拡大された。

 欧州委員会は現下の地政学的な状況でロシアとベラルーシの市民を招き入れるロジックを疑問視し、そのシェンゲン圏全域に及ぶリスクを重大視しているようである。ハンガリーが中国の観光客の増加に対応するため、ハンガリーにおける中国警察のパトロールを認めることになった一件も甚だしく胡散臭く思われる。

 第三は、「主権防衛法」である。法の支配などを巡るハンガリーとの緊張関係は長期間継続しているが、10月3日、欧州委員会は、この法律(2月に発効)は市民の基本的権利を犯すなどEU法に違反するとして、EU司法裁判所に提訴した。この法律は外国や外国の機関の利益のためと疑われる活動を調査する趣旨で、権威主義的体質の政権が好む種類のものである。

ウクライナに言及しなかったオルバン

 オルバンは演説の冒頭、「EUは変わる必要があり、本日はそのことについて諸君を説得したい」と述べたらしい。そうはならなかった。

 議員が次々に立って、民主主義の後退とロシア寄りの立場を攻撃した。最大会派の欧州人民党を率いるマンフレート・ヴェーバーは、オルバンがウクライナに一行たりとも言及しなかったことに衝撃を受けたと述べた。

 オルバンは非難に対し、「欧州委員会は権限を逸脱している。欧州委員会は『中立』で『条約の守護者』であるべきなのに、『政治的兵器』になっている」と主張したと報じられている。

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