ご祝儀目当ての早期総選挙を後悔?
落選候補、辛勝した候補は、議席維持に執心のあまり、まぼろしのご祝儀人気を期待して首相に早期解散・総選挙を強要したことを後悔しているはずだ。もっともくやしい思いをしているのは、持論を曲げて党内世論に屈した石破氏自身だろう。信念に従って慎重に解散時期を見極めるべきだったと自らを責めているかもしれない。
与党敗北の原因は、ひとつにかかって、石破首相の度重なる食言、言行不一致に帰せられよう。
首相は9月の自民党総裁選期間中、早期解散に慎重、衆参両院での予算員会を優先させる姿勢を示していたが、いったん就任すると、党内からの期待、圧力に抗しきれず、わずか8日後に断行してしまった。
資金集めパーティー収入めぐる政治資金規正法違反事件に関与した前議員の処遇をめぐる迷走も有権者の眉をひそめさせた。一時は、公認やむなしとの方針を固めながら、きびしい世論に驚き、公示直前になって急遽見送りを決め、比例区との重複立候補も認めなかった。
土壇場での方針転換に対して、対象となった議員らは強く反発、党内の亀裂が広がった。
政策面では、当初の日米地位協定見直し、アジア版NATO構想などについても、それぞれ、「簡単には実現しない」「一政治家としての考えを述べただけ」などと弁明、持論を撤回、後退させていった。 そのせいもあってか、内閣支持率は発足当初から各メディア押しなべて50%前後、20%台もみられる低空飛行だった。
選挙戦大詰めにきて、非公認を含む候補者が代表を努める支部に2000万円の資金を提供したと報じられたことも打撃となった。候補者のなかには、「開いた口が塞がらない」など公然と批判が起き、応援演説に来てもらった〝返礼〟か、街頭演説で「高市早苗さんに総理になってほしい」などとぶち上げる議員も出た。
候補者側によかれと思って大金を支出してかえって恨まれ、就任早々の総理・総裁が東奔西走しているなかで、その〝政敵〟を有権者の前で「次の首相に」と持ち上げる候補を抱える政党が選挙に勝てるはずがない。
日本政治は停滞へと陥るか
過去の総選挙での自民党敗北を振り返ってみると、スキャンダル、トップの不人気、党内の分裂、いずれかにあてはまるケースがほとんだった。
2008年のリーマン・ショックが引き起こした世界不況に対して当時の福田康夫内閣、後継の麻生太郎内閣は有効な対策を打てず支持率が低迷し、翌年8月の総選挙で大敗、政権を明け渡した。
代わって登場した民主党政権は、党全体が内政、外交で経験、準備不足をさらけだし、一年ごとに首相が交代したあげく、12年秋の総選挙で大敗、あっけない政権転落となった。