2024年11月22日(金)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2014年2月6日

 従って、2014年に最も起こり得る戦争のシナリオは、最近の中国による防空識別圏設定のような行いに日本が反応し、中国の航空機や艦船を攻撃して死傷者を出し、海上戦が拡大するというものである。日本の政治家は、中国は米軍が出てくることを怖れて手を控えるだろうと思っているかもしれないが、朝鮮戦争の時のように、中国は自らが弱い時でも出てくるものである。このようなことが実際に起きることはないだろうが、用心は必要である、と論じています。

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 アリソンは国防次官補まで務めたことのある学者ですが、現在の発言力は大きくありません。しかし、この論説は、日本及び安倍政権について、米国の一部に存在する思い込みを体現するものであり、日本の現状と政策への理解不足と突き放した軽視が窺われます。例えば、日本は「起死回生の一発」など狙っていませんし、防衛費の増額は、自助努力の向上として、米国側としても本来望むところです。

 同盟ブロック間のバランスに依存していた百年前の欧州と比べると、現在の東アジアは中国とその他の間のバランスで動いている感があります。中国は同盟国を持っていないばかりか、その要人達は子弟を米国に留学させ、財産も米国に送金する有様です。他方、米国も中国との経済関係に大きく依存しています。

 日本に基地を置いている米国が、日本が中国に対してどこまでも劣位に陥る、ということは望まないでしょうが、米中間の相互依存関係に、米国は日中間の紛争に巻き込まれないよう気を付けるべしとのアリソンの論調を重ねていくと、それは「日本の台湾化」となってしまいかねません。つまり、先端兵器を台湾に渡さないことで台湾が中国を挑発するような事態を防いでいるやり方を、日本にも適用するということです。アリソンのような考え方は、徹底すれば、そのようになりかねない危険なものです。

 中国は、この論説が示しているような、米国の一部にある日本に対する思い込みを、これからも増長させるべく運動するでしょう。宋子文等による対米世論工作にみごとに負けた戦前の轍を踏まないよう、巧妙な対米広報活動を強化していく必要があります。

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