この点で、ハリス氏のアプローチは違った。彼女は終始「こぼれるような笑顔」を前面に出していた。大統領候補となった当初は、その笑顔が軽薄だとして、トランプ陣営などから様々な切り取り動画を使って攻撃されていた。だが、8月末ぐらいから若い女性を中心に、ハリス氏の笑顔は「女性の人生の喜び(Joy)」を表現するとして、あれは新しいカリスマなのだとしてブームになった。
けれども、結果的にこれは「女子会のよう」だとして有色人種を含む男性票が離れる理由にもなった。ハリス氏の満面の笑みを見ると、男性としては恥ずかしくなるとか、引いてしまうというのである。
一部には、有色人種に特有な男尊女卑の潜在感情の歴史が、彼女を忌避したという解説がある。若い世代は違うと思うが、全くゼロとは言えない。この問題は、非常に難しい問題を含んでおり、以降の女性政治家は更に踏み込んだ作戦が必要となろう。
1期目とは異なる「トランプ新政権」の性格
選挙結果の分析については、更に詳細なデータが出てくればより明らかとなろうが、問題は2期目のトランプ政権の性格である。1期目は長女のイヴァンカ・クシュナー夫妻や、ペンス副大統領(当時)が「現実との橋渡し」の役を務めていた。その3人は、今回の政権には関与しないであろう。その代わりにと言っては何だが、まず次期副大統領となったJDヴァンス氏が、実力副大統領として政策と議会対策に動くことが予想される。
更にイーロン・マスク氏も政権入りして、行政改革にナタを振るうとしている。バンス氏もマスク氏も、どちらも高度な知的能力と、政治家や企業家として、類まれな野心を持った人物だ。彼らには独自の価値観も世界観もあり、それは世代を代表するようなスケールを持っている。現在78歳であり、今後の選挙の心配をする必要のないトランプ氏としては、この両名をはじめとした、全くの新世代に多くの政策を任せて行くかもしれない。
仮にそうなるとしたら、2期目のトランプ政権は1期目とは全く異なる姿を取るであろう。日本の外交についても、首脳同士の信頼関係も大事だが、打ってくる政策の背後にあるバンス、マスクといった頭脳の深謀遠慮までを読み取っての対策が必要となろう。