2025年1月6日(月)

プーチンのロシア

2024年12月10日

 しかし、ロシアの商品輸出入額を四半期ベースで跡付けた図2を見ると、貿易は22年こそ変動が激しかったものの、それ以降は23年、24年とずっと横這いの状態が続いていることが確認できる。図2は24年第3四半期(7~9月)までを示しているが、すでに出ている10月の速報値にも異変は見られない。数字上の輸出入額では捉え切れない要因によって、為替市場が翻弄されていると考えるべきだろう。

 具体的に言えば、まず、地政学的なリスクの上昇を受けた外資による証券投資の引き揚げがあったようだ。また、ロシア当局はウクライナ侵攻後、輸出業者に獲得した外貨の一部を売却することを義務付けているが、今年夏にその義務が緩和された。そうした中、輸出企業が外貨を売り渋る動きが広がっていたようである。

 さらに、ロシアでは年末が近付くに連れ、政府部門でも民間部門でも輸入のための外貨需要が高まっていくという要因もある。こうしたことが積み重なって、外為市場のバランスが崩れ、24年秋を通じてルーブル安が進行してきたとみられる。

 なお、11月下旬のルーブル急落に関し、ロシアのM.レシェトニコフ経済発展相は、「今般のルーブル安はファンダメンタルズとは関係なく、一つには米ドルの世界各国通貨に対する上昇によるものだ」とコメントした。ルーブル安というよりもドル高だというわけである。

 しかし、さすがにこれは苦しい説明だろう。確かに、11月5日に投票が行われた米大統領選でトランプ氏が勝利したことを受け、一時は米ドルの独歩高の様相を呈した。しかし、11月にロシア・ルーブルは人民元に対しても7%ほど価値を下げている。ロシアの貿易取引に占める人民元決済の割合はすでに4割を超えているだけに、当然影響は大きい。

ガスプロムバンクへの制裁が引き金

 さて、11月下旬のルーブル急落の引き金を引いたのが、米国によるガスプロムバンクに対する制裁決定だったという点で、衆目は一致している。同行は天然ガス独占企業であるガスプロムの子会社で、ロシアからガスを輸入した国が代金を決済する窓口に指定されている。

 ロシアから欧州向けの天然ガス輸出が激減したとはいえ、ハンガリー、スロバキア、オーストリア等は輸入を続けており、それゆえ米国もガスプロムバンクは制裁の対象外としてきた。それが、11月21日に米財務省は突如、ガスプロムバンクを含むロシアの数十の銀行を制裁リストに追加したのである。この措置は12月20日に全面発効し、これ以降ガスプロムバンクを通じたガス代金の決済は不能になる。

 特にロシア産ガスへの依存度が高いハンガリーは12月3日、ガス決済に関してはガスプロムバンクに対する制裁の例外とするよう、米当局に訴えた。米国がロシアから濃縮ウランを輸入する際に、その取引に関してはロシアの銀行に対する制裁の例外とされており、ガス輸入に関しても同様の取扱いを認めてほしいというのが、ハンガリーの言い分である。


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