2025年1月4日(土)

モノ語り。

2024年12月30日

「タイパ」ではない、手間が生むもの

 最近「タイパ(タイムパフォーマンス)」などと、「時間対効果」が求められることが多いですが、それによって失われること、実現できないことも少なくないと思います。 

宇陀「きみごろも」 その柔らかさと、優しい甘さは、他のお菓子には類を見ない

 実は、私がこの「きみごろも」のことを知ったのは、尊敬する人の一人で、保険営業のプロの女性から、お土産でいただいたからです。あるとき、東京で夜開催する会合のために、朝から奈良に行って「きみごろも」を買ってきたというのです。奈良に行くだけでもすごいと思っていましたが、実際に、自分自身で行ってみるとその「手間」を実感することができました。

 JR大阪駅から行く場合、大阪環状線から鶴橋駅で近鉄に乗り換え、長谷寺駅の次、榛原駅が最寄り駅になります。ここまで約1時間半です。それからタクシーで約20分。ここまで行ってわざわざお土産を買ってくれたのかと思うと、感動的ですらあります。しかも、このように実際に行くことで、その手間を受け取った相手が感じてくれるのはむしろ稀です。

 そうだと分かっていても、その手間を惜しまない。「お土産〝道〟」というものがあるとすれば、彼女は達人レベルと言えると思います。人を思いやる彼女の真髄を思い知らされました。だからこそ、保険の契約もとることができるのでしょう。

 私たちが取材している間にも、多くのお客さんが車でやってきて、県外ナンバーも見られました。手間をかけたからこそ得られる逸品なのです。

きみごろも本舗 松月堂 〒633-2174  奈良県宇陀市大宇陀上1988 0745-83-0114
Facebookでフォロー Xでフォロー メルマガに登録
▲「Wedge ONLINE」の新着記事などをお届けしています。
Wedge 2025年1月号より
移民問題に揺れる世界 水面下で進む日本人の海外流出
移民問題に揺れる世界 水面下で進む日本人の海外流出

世界は今、移民・難民問題で大きく揺れ動いている。事実、2024年11月の米大統領選挙では、不法移民対策が大きな争点となった。彼らは命がけで故郷を離れ、今この瞬間も、米国や欧州大陸を目指し、移動を続けている。その光景は、戦前・戦後に日本人が「出稼ぎ移民」として、ブラジルやパラグアイを目指した姿とも重なる。翻って、現代日本。かつての状況と異なるものの、今、静かに日本人の海外流出が続き、23年の永住者は調査開始以降、最多の約57万5000人に達した。豊かで暮らしやすいと思われている日本から、なぜ日本人は〝脱出〟していくのか。彼らの動きが物語ること、そして、これからの日本社会に必要なことを考えたい。


新着記事

»もっと見る