2025年1月8日(水)

Wedge REPORT

2025年1月5日

「時代を映す鏡」に十分なり得る蔦重

 横道にそれすぎたので、「べらぼう」に話を移そう。

 激増している日本を訪れる外国人が口々に語るのは、日本人の礼儀正しさ、やさしさ、親切、綺麗好きなどだが、そういう気質は今に始まったことではなく、別の言葉で表現すると「義理と人情の日本人」ということになりはしまいかと筆者は考える。江戸幕府公認の遊郭「吉原」という、江戸文化になくてはならない華やかな場所で生まれ育った「べらぼう」の主人公・蔦重が、生涯貫き通したのもまさにそれだった。

 〝21世紀の第1四半期〟の区切りとなる2025年の1月5日には「初回放送パブリックビューイングin台東」というイベントが「浅草ビューホテル」で午後5時から開かれ、スペシャルゲストとして若者に人気のある役者(蔦重役の横浜流星、花の井役の小芝風花ほか)が登場する。

 憎まれ口を叩くようだが、筆者には10~20代より40~50代を掘り起こすキャンペーンをやった方がいいという気がしてならない。というのも、NHK放送文化研究所「放送研究と調査」によれば、2017(平成29)年「おんな城主 直虎」、2018(平成30)年「西郷どん」を対象にした視聴率調査(全国視聴率調査における11月調査週のリアルタイム視聴率)を行った結果は、男女とも60代以上の高齢者がメイン視聴者ということだったからだ。

▼おんな城主 直虎  

男 20代以下0~1%、30代・40代3%、50代5%、60代・70歳以上15%

女 20代以下0~1%、30代2%、40代5%、50代12%、60代24%、70歳以上19%

▼西郷どん

男 20代以下0~1%、30代4%、40代3%、50代8%、60代15%、70歳以上16%

女 20代以下0~1%、30代2%、40代6%、50代10%、60代14%、70歳以上29%

 「べらぼう」は、田沼意次時代の自由な雰囲気のなかで、浮世絵、戯作、狂歌といった庶民文化の花が乱れ咲いた時代が舞台である。出版文化の担い手として登場した蔦重は、斬新なアイデアを駆使して、恋川春町、山東京伝、曲亭馬琴ら戯作者や、歌麿、写楽ら浮世絵画家の話題性豊かな傑作を次々と世に送り出した仕掛人である。

 現代でいえば、蔦重は多くの偉才を発掘し、異分野を結びつけて、大ヒット作を生み出す「メディアミクス」の達人ともいえる。40~50代といえば、会社では管理職の重責を担い、売上の低迷や打開策に日々悩む人も多いだろう。時代は違えども、蔦重の類まれな手腕がいかに育まれ、どのように磨かれたのかは、ビジネスの観点からも大いに役立つはずだ。そういう人物を主役に据えたのが、今年の大河ドラマ「べらぼう」なのである。

 コロナ禍は終息しても戦争が絶えることはなく、時代は激動し続けている。大河ドラマは〝時代を映す鏡〟でもある。「今」という時代を大河ドラマという鏡にどう映し出すのか。視聴率という国民の支持率は、過去の延長線上をさまようのか、それとも人気沸騰して〝大河新時代〟を切り拓くのか――ドラマの内容だけでなく、そういう視点でも野次馬的興味は尽きない。

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