2025年2月15日(土)

Wedge REPORT

2024年12月27日

適用拡大の事例

 頭頚部部がん以外のがんの適用拡大に向けての取り組みも紹介された。慶応義塾大学大学院薬学研究科の花岡健二郎氏は、難病の一つである成人T細胞白血病・リンパ腫への応用を試み、光免疫療法が、この病気の治療に有効である可能性を示すことができた。

 腎泌尿器外科が専門の東京科学大学の福島啓司氏は、膀胱がん、腎がん、前立腺がんの開発に注力、腎がんではマウスを使った実験では光免疫療法が高い治療効果が示すことが明らかになっているという。

 治療が難しいとされている膵臓がんについて、東京科学大学の制がんストラテジー研究室の中山敬一氏は、マウス実験により、近赤外線照射をすると、膵がん幹細胞に対して強力な殺傷効果とがんの治癒を得ることができたとしている。

 またアスベスト(石綿)を長年にわたり吸ったことが原因でかかるがんの中皮腫に対しても、兵庫医科大学の呼吸器外科の松本成司氏から光免疫療法の適用と治験の準備をしているとの報告があった。

 このように頭頚部がん以外の部位やほかのがんに対しても、この治療法の有効性が徐々に明らかになってきており、今後は臨床研究などを通して実用化につながることが望まれている。

世界に発信できる治療法

 元厚労省医務技監の鈴木康裕・国際医療福祉大学学長が「光免疫療法―パラダイムシフトに向けたロードマップ」と題して特別講演した。鈴木氏は「光免疫療法は日本で初めての世界に向けて発信できるがん治療法だ。この治療法は、他の治療法で治らない場合に使われているが、今後は初期の段階でこの方法を適用することも考えられる」との見方を示した。

 さらに「光免疫療法はまだ適用事例が少ないため、一握りの医師にしか知られてないので、啓蒙活動をする必要がある。ゲノム分析とAI(人工知能)も活用すべきだ」と述べた。日本のがんの現状については「肺がん、大腸がん、すい臓がんは男女共に増えており、この3つのがんが課題だ。こうしたがんに対しても光免疫療法が適用になるようになってもらいたい」と指摘、がん克服のために光免疫療法がさらに広がることへの期待感を示した。

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