北海道の大ズワイガニはバルダイ種
23年の夏ごろから北海道で子供の大ズワイガニが大漁に発生しました。カレイ漁の網を食い破る被害が続出し、厄介者となっている報道をご覧になった記憶もあるかもしれません。このためカレイの水揚げは落ち込み、網の買い替えや処理費用で出費が重なって、数億円に上る損失がでるだろうなどと報道されていました。
そこで、1尾300~500円前後で販売したところ価格が安いため、瞬く間に販路が全国に広がっていきました。
なお、異常発生しているといわれている大ズワイガニは、まだ「子供のカニ」です。親と異なり食べ応えのある肉がたっぷり詰まったカニの足とは程遠い状態です。このため価格が安いのです。
筆者は、みそ汁やラーメンに入った大ズワイガニを何度も見ています。ところが、これがどれだけもったいないことをしているのか、といった報道は見たことがありません。
大ズワイガニの成長はズワイガニの成長より早いといわれています。このため今年(24年)には昨年より大きくなっています。それで価値も上がってくるのですが、親になった大ズワイガニの価値はそんなものではありません。
1980年代の大量発生時も獲り尽くす
歴史をひも解くと、1980年代にも北海道で大ズワイガニが大量に発生しています。具体的には85年に100トン台だった漁獲量が1986年に2300トン、1987年に1400トンと大漁になったものの、その後は獲れなくなって鎮静化しています。
日本海では、オスのズワイガニの甲羅の幅は省令で90ミリメートル(㎜)以上、自主規制で100㎜以上などと規制して漁獲しています。この大きさになるには8~10年かかります。一方で、昨年(23年)の北海道の大ズワイガニは50~70㎜前後のカニでも獲っています。今年は成長しているといってもまだ子供です。
カレイなどの漁業はもちろん重要で、その網に絡まってしまう大ズワイガニの子供は、現場からしたら大迷惑な存在です。しかしながら、なぜこのような「絶好の好機」を80年代に続き、再び潰してしまう過ちをしてしまうのか、筆者には残念でなりません。
ノルウェーでも同じようなケースがありました(漁獲量推移・下のグラフ参照)が、資源管理の効果で今ではズワイガニは莫大な財産になっています。23年の水揚げ量は7643トンで水揚げ金額62億円(NOK=13.8円)。
ノルウェーの沖合では、96年に初めてカニの資源が確認されました。その後ノルウェーは、15年以上も増えるのを待って、12年からようやく獲り始めました。25年には約1万2000トンのズワイガニが漁獲される予定です。ちなみに日本のズワイガニ漁は全国で約2000トン(23年)に過ぎません。