このように携帯ショップを取り巻く環境が激変しているにもかかわらず、携帯キャリアが販売代理店を評価する際の評価軸は、端末の契約数やサービスの契約数など、従来と変わっていない。
そんな携帯ショップが、自らが生き残るために、キャリアからの手数料配分が高いオプションサービスへと契約者を半ば強引に勧誘したり、抱き合わせ販売によって回線数を水増しして手数料を確保したりしているのが、昨今の問題の本質だ。そんなしわ寄せを一部ユーザーに転嫁してよいわけではない。
例えば昨年秋ころauショップにおいて、同社のオプションサービスである「auスマートパス」を半ば強制的に勧められるケースが問題視された。実はこの問題、当時、KDDIからauショップに支払われる手数料配分が、auスマートパスの加入率の比重を高くしていたことがその背景にあった。
auスマートパス自体、初期段階で400万ユーザーを獲得していると見なし、コンテンツプロバイダーとレベニューシェアするモデルとしていた。そのためKDDIとしても、早期にユーザー数を拡大し、損益分岐点を超える必要があり、手数料配分を高くしていたわけだ。
例えばNTTドコモは、オプションサービスなど上位レイヤーの新領域の事業の収益を2015年に1兆円にするという目標を掲げている。「dヒッツ」などのオプションサービスが時期によって急増しているのも、こうした理由からだろう。
ユーザーに対して新しいサービスの存在を知ってもらうことは、新事業を育てる上では重要な取り組みだ。ただこのような丁寧な市場形成を一足飛びに越えて、半ば強引に“契約数”ばかりにフォーカスしているのが、昨今の問題噴出の本質ではないか。
これらのオプションサービスは、アクティブ比率が低い割にユーザー数が多く、コンテンツ業界の健全な成長を阻んでいるという指摘もある。実力以上のビジネスを進めることによる、関連業界への弊害も大きい。