論理的説明のない判断
まず、日本製鉄のUSスチール買収について、この社説が言うように、USスチールの買収は、ほとんど確実に米国経済にとって利益があり、経済合理性を備えた日本側からの贈り物である。しかし、大統領選挙の年に、激戦州で、労働組合が反対している案件を強行することのリスクは高い。
そのようなリスクがある中で、この取引を進めるのであれば、少なくとも、契約内容をより厳しく精査すべきだった。契約では、米規制当局の審査で買収が認められない場合には、日本製鉄の方が5億6500万ドル(約800億円)という巨額の違約金を払うことになっているらしいが、これは、USスチール側の方が政治的リスクをより良く理解した上で契約交渉を進めていたことを示している。
一方、過去150年間外国首脳の出席の記録が無いと言われる米国大統領の就任式に習近平を招待したトランプ次期大統領の意図は奈辺にあるのだろうか。論理的説明は無い。
就任後本格化するウクライナ戦争停戦交渉に向けて、プーチン大統領を交渉の場に引きずり出すために習近平の力を借りようとしたという説があり、その後のメドベージェフの突然の訪中や、トランプ・オルバンの電話連絡に続くオルバン・プーチンの電話会談を関連する動きとする解説があるが、疑わしいし、仮にそれが事実であったとしても、電話すれば停戦がまとまると言うのは余りに楽観的である。
大事なのは、停戦に向けた交渉内容であり、ゼレンスキー大統領が、ロシアに占領されている自国領土をあきらめる可能性を示唆する一方で、停戦後の自国の安全の保障を西側諸国に求めているという事実を軽視すべきではない。基本は、ロシアによるウクライナ侵攻が繰り返されないことをいかに確保するかにある。それは北大西洋条約機構(NATO)または米国・主要欧州諸国によるウクライナ防衛の具体的コミットメントが必要だと言うことだ。