金銭事情や食生活については、メジャーや日本プロ野球の2軍と比べても厳しい状況には変わりないが、10年以上前にマイナーに在籍していた当時の選手に取材した時点でも、選手同士がルームシェアなどで節約はするものの、「ぜいたくをしなければ、ミールマネー(食費)も支給されて、多少の貯金もできる」と話していた。
日本球界は「出口戦略」を練る時
日本の選手たちは近年、目標をメジャーに置く傾向が一段と強まってきている。マイナーでの環境や契約待遇がNPBを上回るようになり、森井選手の今後の活躍次第では「即メジャー」の道がさらに大きく切り開かれることも十分にありうる。
また、プロに限らず、昨年春には岩手・花巻東高校時代に史上最多の高校通算140本塁打をマークした佐々木麟太郎選手が米名門大のスタンフォード大学へフルスカラシップ(全額奨学金)で進学し、文武両道を突き進む環境に身を置く。筆者が取材した中学年代の中には、高校進学を機に日本を飛び出し、カナダの高校からメジャー挑戦を目指すというプランを持っている選手もいる。日本の球界関係者によれば、こうした選手は今後も増えていくだろうと指摘する。
もちろん、森井選手や佐々木選手らは新たな挑戦のパイオニア的な存在であり、まだ成功モデルが確立されているわけではない。だが、中南米などのメジャーを目指す選手にとっては、マイナーからはい上がるというのは当たり前の日常でもある。サッカーやバスケットボールなど他競技のスポーツに加え、勉強面でも日本の優秀な学生の進学先に海外志向が強まっており、野球界だけが決して特別ではない。
では、空洞化がさらに懸念される日本球界としては、どんな手立てが考えられるか。ポスティングシステムやフリーエージェント(FA)で有力選手の流出が止まらないが、メジャーに挑戦した選手の誰もが成功できるわけではない。いったんは海外の高校や大学に進学した選手にもスカウティングの網を広げて、これまで以上に“逆輸入”の形でドラフト戦略を練ることも効果的な時代になるかもしれない。
メジャーで活躍した日本人選手も将来的にFAになったときに日本球界を移籍の選択肢に入れる可能性もなくはない。若い選手たちが高いレベルへ挑戦することに危機感を抱くだけではなく、海を渡った選手たちの「出口戦略」にシフトしていく時代になってきたのかもしれない。