2025年4月28日(月)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2025年2月11日

 米国の技術的優越性を追求すれば既に米国のテック企業の支配に挑戦してきた他国の行動をより大胆にさせる。EUはこれまで10年以上テック企業と闘ってきた。メキシコ、インド、ブラジル、トルコ、南ア、ケニア、エチオピア、インドネシア等の現在の指導者がトランプと友好関係にある国々においてさえ、米国が市場開放と米国企業に一層有利な条件を強要すれば、地元企業と輸出業者を敵に回すだろう。

 米国は戦狼外交下の中国と同様、国内外のルールを捻じ曲げる国として知られることになろう。米国による防衛に見合う金を払うべきだという要求は、世界的恐喝集団のようだ。

 台頭する中規模国は20世紀に比べ国際場裏でより独立的役割を果たす能力があるので、米中競争の駒となるつもりはない。代わりに彼らはトランプ政権が米国第一を推し進めるのと同様のやり方で、自身の国益増進を主張するだろう。

 ジョージW.ブッシュは有志連合に有利に国際的ルールをねじ曲げた。それ以降、共和党の一国主義者達が米国の国際関係に対してもたらしたダメージを修復し新たな非公式同盟・同志国関係を作り出すために、民主党の多数国主義者は長年努力してきた。しかしこの連鎖はパートナーや同盟相手としての米国の信頼性をすり減らしてきた。そして次の時代の米国の戦狼外交によるダメージは永遠のものになるかもしれない。

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もはや軍事的圧力さえ否定しない

 上記と同様の記事は、エコノミスト誌やウォールストリート・ジャーナル紙にも見られるので、米国が以前と異なり、自らの意に沿った世界秩序形成に動く、大国の横暴がまかり通る世界になる、ということが問題意識になりつつあるといえよう。

 追加関税はさておき、一番の問題は、グリーンランドやパナマ運河の米国による支配を主張し、その実現のために軍事的威圧の使用さえ否定しないということだ。ロシアや中国とどこが違うのか。

 ロシアはウクライナに武力侵攻しルールに基づく秩序を武力で一方的に変更したからこそこれだけ批判されているのだが、今の米国は実際の武力行使に至っていないという一点でしかロシアと異ならない。既に武力による威嚇はしているので、国連憲章違反とさえ言いえるだろう。


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