2025年4月18日(金)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2025年2月11日

日本もやるべき3つのこと

 トランプ就任直後のこの時点で指摘したいことは、次の3点である。

 第一に、「同盟は特権ではない」ということだ。ルビオ国務長官は公聴会で「国務省の今後の行動や支出は、それが米国を『より強く、安全に、より繁栄させるかどうか』で判断される、と述べた。そこには、「同盟だから」といった判断が入る余地はない。あくまで、その国が具体的行動で米国第一主義のために貢献するかどうかでその国との関係を評価するという基本的な判断基準を大変に分かり易く「下品に」提起している。

 第二に、換言すれば、同盟国であろうがなかろうがこの判断基準に当たらない国、トランプ政権関係者の関心外の国は見捨てられるということだ。中国と緊張関係にあるフィリピンやインドネシアを含む東南アジア、それに、インド以外の南西アジアについて、トランプ政権関係者が何か発言するのを聞いたことがない。

 中国との間で具体的紛争が起こるとすれば、南シナ海における中比紛争が一番可能性が高い。そうなった場合に、フィリピンは初めてトランプ政権のレーダースクリーンに登場するが、中国とのディールの中では無視しうる駒と判断されるのだろう。

 この意味することは、日本の裏庭にあるこれらの国々は、日本が自主性を発揮して守る、またはその重要性を米国に印象付けることが必要になるということだ。米国を除いたインド・インドネシア・日本・豪州からなる「アジア版クアッド」を作るのでも良いし、フィリピンが進める東南アジア諸国の沿岸警備隊間の連携を支援し米国を除く形で南シナ海で共同訓練をやるのも良い。

 ともかく、具体的に仕掛けないと米国の関心を引くことはできない。そして、このような行動は米国をより強く、安全に、より繫栄させることに繋がる、と主張すれば、日米同盟関係強化にもつながるだろう。

 第三は、米国が友達を失っていく以上、それを補うだけ友達を作っていくことは日本のような同盟国の責務であり、グローバル・サウスの取り込みの具体化は待ったなしの課題だ。来年議長国フランスが新たな主要7カ国(G7)のサイクルを開始するのに合わせ、常任アウトリーチ国制度(議長国に関わらず、常にG7サミットにアウトリーチ国として招待される国のカテゴリーを創設。具体的には、インド、ブラジル、インドネシアと東南アジア諸国連合〈ASEAN〉議長国、南アとアフリカ連合〈AU〉議長国、サウジ、トルコ、韓国、豪州の10カ国)を導入するように今から根回しを是非始めるべきだろう。

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