2025年3月23日(日)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2025年2月11日

 1月19日付けフィナンシャル・タイムズ紙は‘America’s new ‘wolf warrior’ diplomacy could cause lasting damage’(米国の新たな「戦狼外交」の悪影響は長期的)と題する、アン・マリー・スローター同紙寄稿編集者(国際政治学者、国際法学者であり、2009年から11年まで国務省政策企画本部長も務めた)による論説を掲げ、トランプ第二期政権の外交の問題点を指摘している。要旨は以下の通り。

(ロイター/アフロ・Kapook2981/gettyimages)

 約20年中国は平和的台頭原則を守ってきた。この概念は鄭必堅国務委員の作で中国が国際システムに従い他国の脅威とならず権力と繁栄を強めていくことを意味する。この戦略は90年代から2010年代中頃まで成功し、中国の国内総生産(GDP)と影響力は驚異的に拡大した。

 しかし習近平は方針を変えた。17年以降彼は後に戦狼外交と言われる戦術を始めた。中国の外交官は中国の国益をより攻撃的に主張し数年で中国は平和的台頭による善行の積み重ねのほとんどを失った。

 23年に習はその方針から後退したが中国の国益の攻撃的伸長は既に国際的地位を悪化させ対中不信を招き多くの中国のパートナーは対中リスク回避のため対米関係を強化した。

 今や、トランプとテック大企業の仲間達は「西部開拓時代外交」を推進している。それはシリコン・バレー的傲慢さが加わり開拓時代よりも悪い。

 その特徴は、至高の自信とあらゆる種類のルールの無視、短期的自己利益を増進する限り誰とでも取引することだ。トランプ自身、自分が最高位に居る世界に生きており、カリフォルニアの新たな友人たちと同感覚だ。権力に上り詰め技術革新で想像を超える富を持つ多くの男性は米国の他国に対する優越性は技術セクターの他の米国経済分野に対する優越性と同様自明だと考えている。

 そのような姿勢では、確実に他国と事件や小規模危機を常に作り出す。しかし中国の経験に基づけば、問題は個別の事件ではなく行動の積み重ねが他国の国内政治に浸透し同盟関係を不可逆的に変えていくことだ。

 習が気付いたように、中国の好戦的態度は米国と欧州連合(EU)内の対中強硬派を強化し対中支持者に不信の種を撒いた。米中関係に対する長期的ダメージはトランプ第一期政権時の行動のみならず、バイデン政権に参画しトランプ政権の反中政策を引き継いだオバマ政権の元高官の見方が大きく変わった結果でもある。


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