2025年3月28日(金)

日本の漁業 こうすれば復活できる

2025年2月21日

 漁業法も「予防的アプローチ」を資源管理の基本原則として盛り込むべきである。こうすることにより、資源評価に基づき抑制的な漁獲枠を設定することに対する原則面での制度的な裏付けが可能となる。

 加えて、目標ラインの達成期限に関して具体的な期限を切るべきである。現行の漁業法では、資源水準が目標ラインあるいは限界ラインを下回っている場合、「資源水準の値が目標管理基準値を上回るまで回復させること」という基準に従い漁獲枠を設定することを義務付けている(第15条2項)。これに関し、「資源水準の値が10年以内に目標管理基準値を上回るまで回復させること」と具体的な数字を付け加えるのである。また、たとえ漁獲枠をゼロとしても10年以内に目標ラインに達成する可能性が低い場合は、遅滞なく禁漁とする旨の文言を追加すべきである。

 これにより、「経営面も重要だから」といった言い訳により効果的な資源回復策を遅延させることに対する防波堤となり得よう。もとより、漁業法の趣旨を踏みにじる今回のルール変更は直ちに廃棄されるべきである。

すでに存在する漁業者への救済制度

 漁獲枠の大幅削減は、漁業者に対する痛みを伴う。これに対しては救済制度が既に整備されている。

 「積立ぷらす」と呼ばれる共済制度に加入している場合、漁業者は減収を被った場合に平均収入の概ね9割までを補填される。国際的な圧力に伴い強い漁獲制限を行った太平洋クロマグロに関しては、特例として95%までを補償するという措置が取られている。強い漁獲制限の結果、クロマグロ資源は現在急速に回復しつつある。この制度を活用しない手はない。

 我が国周辺の水産資源は、ごく一部の者の短期的な利益のためにあるのではなく、我々全ての長期的な利益のためにある。我々の先人より受け継いできた海の恵みは、持続可能な利用によって将来の世代に引き継いでゆかなければならない。

 水産資源を広く利用する我が国の食文化は、世界に誇るべきレガシーである。スルメイカの愚を、繰り返してはならない。

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