2025年4月3日(木)

お花畑の農業論にモノ申す

2025年2月25日

ハードル高い買戻し条件付き売却

 政府備蓄米が実際に市場に出回るのは3月下旬ごろとみられるが、コメ業界では、それによって価格の高騰が収まるとは必ずしも見ていない。首都圏のコメ卸の経営者は、その理由について今回の売却は「買戻し条件」が付けられたことをあげる。

 「非常にあいまいな表現で1年以内に同数を返すことになっているが、仮に1俵2万円で払い下げてもらっても令和7年(25年)産が3万円になってしまったら1万円損することになる。怖くて安くは売れないから高く販売するか、返す目途が立たないので買い受けないかのどちらかになる。取り扱いが出来るとすれば全農だけだろう」と見る。

 焦点の売却の価格水準については、農水省が調べている相対取引価格の直近の値になると予想している。今年1月の相対価格は全銘柄平均2万5927円で前年同月に比べ1万569円、69%高となっているが、令和7年(25年)産がこの価格より安くなるという保証はない。しかも応札には買い受け業者ごとに上限数量が設定されていることから集荷団体の中には備蓄米の初回15万tも未達になると予想するところもある。

 備蓄米の取引には転売防止にために他業者への貸付禁止や卸から小売への販売は精米に限り、相手先の名前、販売価格、数量も報告する義務がある。誓約書には返却する契約を結ばない場合は入札で契約した価格の1.3倍の違約金を支払わなければならないという条項もある。

 要するに備蓄米の応札資格者にとって高いハードルが設けられているのだが、コメ卸の中には仮に予定通り15万tが売却されたとしても需給が緩和して価格が下がるとは見ていない。それは現在の需給状況が昨年の端境期の8月や9月よりも厳しい状態になっていることを指摘する。

 具体的には農水省調査による昨年12月末の民間在庫は前年同期よりも44万tも少ない253万tで、この在庫が増えることはない。この原因は昨年の端境期に令和6年(24年)産米を早食いした結果で、このまま行くと今年6月末の在庫は、逼迫した昨年6月末在庫の158万tより大幅に少ない110万t程度になると予想され、そこに備蓄米15万tもしくは21万tが放出されても緩和するという状態にはならないと予想している。

単なる「全農救済」か

 そもそも流通の目詰まりを解消するという目的で政府備蓄米を売却するのであれば、なぜ卸業者など精米設備を持っている流通業者に直接売却しないのかという疑問が残る。政府備蓄米は緊急時の売却に備え、コメ卸など120社が買い受け資格者として国に登録しているのだ。

 全国各地にある政府備蓄米の指定倉庫渡しで最低売却価格の下限を決めて買い受け資格業者に直接売却すればスムーズに末端まで行き渡るはずである。それを一端、全農等の集荷業者に売り渡して、それから卸に販売するというのは「全農救済」と言われてもおかしくない。

 これまで全農系統はコメの集荷の太宗を担っており、価格決定権を握っていた。それが近年、集荷数量が急激に落ち込み、令和6年(24年)産では150万tと前年産に比べ約30万tも少なくなった。その原因は令和6年(24年)産が出回る直前の端境期にコメの価格が大幅に値上がりして集荷合戦が激化、結果的に農協系統が買い負けたことによる。


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