2025年3月26日(水)

「最後の暗黒大陸」物流の〝今〟

2025年3月6日

 ちなみに大阪と東京の拠点には、ドライバーの休憩施設としてシャワー室や仮眠室を整備した。一般的にドライバーはトラック内に設けられた簡易ベッドで眠るが、牧田社長は「一般の方で、出張されて車の中で寝る人、おらんでしょ。疲れを取るためには、ベッドで寝ないと」と語る。休憩施設ができたことで、ドライバーはもちろんその家族にも安心してもらえるようになったと考えている。こうした取り組みを進めてきた同社にとって、「2024年問題」は、むしろ好機として映っている。

「待機や附帯業務の作業費請求は非現実的」

 愛媛県の道前運送の森川公社長は、「昔は、当たり前のように改善基準告示を守っておらず、残業時間は月120時間を超えていた時もあります」と苦笑いした。しかし、2012年に労働基準監督署から是正勧告を受け、その半年後に運輸支局の監査が入り、車両停止処分となった。これを機に改善基準告示の遵守を徹底することを決意したという。

 同社は、独自の運賃表に基づき荷主と取引している。相対的に高い運賃額を提示する代わりに、荷主の要望を最大限叶える輸送を行う。例えば、一時保管、引き取り、積み替えなどの附帯業務は、荷主の要望にすべて応え、突発的な依頼も決して断らない。長時間の待機や荷役作業が発生する場合は、断るのではなく、改善基準告示を守りながら引き受けられる方法を考えるようにしてきた。

 例えば、出荷元と納品先のパレットが異なる場合は、あらかじめ納品先のパレットを借りておき、荷物の積み替え作業を自社の倉庫で行う。通常、パレットが異なる場合、荷卸し先で積み替え作業が行われ、それに2~3時間を要する。だが、自社の倉庫で事前に済ませておけば、荷卸し先でもパレット卸しとなり時間は30分以内で済む。着荷主の満足度が高まれば、発荷主も運送契約を継続しようとする。こうした高い輸送品質を提供する代わりに、それに見合う運賃額を受け取ることをモットーとしてきた。

 政府は、運送会社に運賃とは別に待機の料金や附帯業務の作業費を請求するように促しているが、それは非現実的だと同社の森川社長は語る。「それをやろうと思えば、待機が何時間あったのかを逐一ドライバーとやり取りしないといけなくなる。待機時間用の伝票もつくらないといけないし、そもそも待機時間を証明するためにお客さん(=荷主)にサインをもらわないといけない。いろいろな手間が発生するし、終わったらそれをチェックするコストも生まれる。管理コストがあまりにもかかりすぎる。実際にやってみれば、出荷人、荷受人が望むサービスを充実させる方が、荷主も運送会社も、運賃が高くてもトータルコストは安くなることが分かる」。そうした考えから、待機や附帯業務を含む形での取引を行ってきた。


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