例えば、大手自動車メーカーに自動車部品を輸送する現場では、附帯作業が大幅に削減された。以前は、ドライバーが集荷のために倉庫に到着すると、「この品目はあのエリアにあります」といった漠然とした指示が与えられ、ドライバーはエリア内にバラバラに置かれてある集荷対象の段ボールを探し出し、それらを1カ所にまとめ、荷崩れを防ぐストレッチフィルムを巻きつけ、フォークリフトでトラックに積み込んでいた。
しかし、現在ではドライバーが倉庫に到着すると、集荷すべき荷物が1カ所にまとめられ、ストレッチフィルムを巻かれた状態で置かれているようになった。長年、ドライバーが担ってきた作業を、荷主側が引き受けることになったのである。これによりドライバーは、1カ所あたりの積み込み時間が30分以上短縮できたとともに「体に感じる負担が大きく減った」という。
つまり、長い間、ドライバーは倉庫内など見えないところでも荷物を運んでいた。そうした労働に料金が支払われることは稀で、運送費のなかに含まれていると捉えられていた。しかし、ドライバーの労働時間を短縮しなければならなくなったことで、それらの労働が可視化され、改めてその労働を誰が担うべきなのかが話し合われるようになった。その結果、附帯業務の料金の支払いを求めたり、作業員が配置されたりする動きが広がっている。
中小の運送会社における「2024年問題」
「2024年問題」に先駆けて労働時間の短縮に取り組んできた中小企業も存在する。筆者がヒアリングを行った、象徴的な事例を取り上げる。
宮崎県のマキタ運輸は、「2024年問題」が話題になる前から、ドライバー確保のために取り組みを進めてきた。かつて同社では、改正前の改善基準告示を遵守できない運行が目立ち、課題を抱えていた。せっかく採用したドライバーが短期間で離職していくことも珍しくなかった。人手不足が深刻化していくなかで、働く環境を大きく変えようと取り組み始めたのは、2016年ごろだったと同社の牧田信良社長は話す。
それまでは、1人のドライバーが宮崎から東京まで貨物を運んでいた。しかし、新たに大阪と東京に物流拠点を設け、大阪でドライバーを交代させることにした。つまり、宮崎から大阪、大阪から東京で運行計画を組み、労働時間の削減を図ったのである。中継輸送と呼ばれる手法だ。
だが、ドライバーを1人から2人に増やせば、人件費が増大する。そこで、同社は従来10トン車で荷物を運んでいたが、24トンのトレーラーを導入し、1台あたりの荷物量を増やすことで運賃を上昇させた。同時にパレット積みではない荷物はすべて断るようにしていった。結果的に、ドライバーの労働時間を減らし、賃金を上昇させることに成功した。