ちなみに、白ナンバーのトラックを運転している場合にも、ドライバーには改善基準告示が適用される。ただし、労働基準監督署が白ナンバーの事業所に立ち入ることは少ない。ゆえに「2024年問題」を受けて、白ナンバー化が進むのではないかと指摘されてきた。
農産品を運ぶ現場で
「現場はほぼ何も変わっていないよ。改善基準告示は、もちろん遵守できていない」と話すのは、農産品の輸送を手がける運送会社だ。同社は、ここ数年、元請け業者に、繰り返し運び方の見直しを求めてきたが、受け入れられることがないまま2024年4月を迎えた。ドライバーの労働時間は短縮しておらず、ゆえに賃金も変化していない。
農産品の輸送現場では、もともとパレットの普及が遅れている。パレットの利用を長年お願いしているが、「パレット化はまったくされてない」。ドライバーは、現在でも段ボールを1つずつ手積みしており、市場でも2~3時間かけて手卸ししている。
たいてい産地を夕方に出発し、深夜にトラックを走らせ、翌朝までに関東地方の市場まで荷物を運ぶ。わずかな変化は、荷卸しを手伝う人を配置する市場が出てきたことだ。だがそれでも荷役時間の削減は微々たるものだという。
同社は、「2024年問題」に備えて、朝から荷物の積み込みを始め、午前中のうちに地元を出発したいと荷主に相談していた。午前中に出発できれば、市場到着後にドライバーに休息を取らせることができる。リードタイムが半日ほど伸びるが、改善基準告示の遵守のために協力を要請した。
しかし、朝から荷物を積み込むには、商品の受けつけを締め切る時刻を早める必要がある。荷主は改善策を検討してくれたものの、実現しなかった。「解決策はない。手探りで取り組むしかない」状況である。現在は、改善基準告示を守れないまま輸送を続けている。
中小の運送会社にとって中継輸送の導入は難しいという。中小の運送会社同士で行うとしても、中継拠点が必要となるし、生鮮品輸送の場合は、冷凍・冷蔵輸送に対応した車両も準備しなければならない。そもそもパレット化がされていないため、積み替え作業にかなりの時間を要する。複数の会社で対応しても、それに見合う運賃がもらえる見込みもない。
同社は「運賃は、交渉の結果15%ぐらいは上がったんですよ」と話す。しかし、上昇分は燃料費の高騰に消え、ドライバーの賃金上昇にまでは回っていない。改善基準告示を遵守しようと思えば、運賃が50%ぐらい上がってくれないとできないと話し「もし50%上がっても、標準運賃の7割ぐらいの水準だ」と苦笑いした。
手積みで行う附帯作業の料金は収受できず、市場での長時間の荷待ちにかかるはずの待機時間料も受け取ったことはない。「運賃さえ上がらないのに、料金なんてもらえるわけがない。みんな(他の運送会社)がそれぞれ値上げ交渉の行動を起こしていかなければ収受できるはずがない」とあきらめ顔だ。