2025年3月26日(水)

「最後の暗黒大陸」物流の〝今〟

2025年3月11日

横行する「白ナンバー化」

 こうした現場では、「『白ナンバーにしちゃえばいいじゃない。あっち(の運送会社)は白に変えたよ』と荷主から言われる」とこぼす運送会社が少なくない。「白ナンバー」とは、自家輸送を指す。

 トラック運送業とは、他社の貨物を輸送する事業である。貨物を運ぶうえで運賃の受け渡しが発生する場合には、運輸局の許可を取る必要があり、許可を得たトラックが営業用トラックとして緑地のナンバープレートを付けることになっている。

 他方、自社の貨物を自社の車で輸送することも認められており、これは自家輸送と呼ばれる。例えば、出荷時刻が不規則な現場では、生産現場で働く労働者が、商品ができあがった段階で、自社の車両を使って輸送する場合がある。こうした輸送においては、運賃のやり取りは発生しない。

 自家輸送は、輸送トンキロで見ると国内貨物の12.4%を占める輸送手段である。公道を走る車両は、一般的に白地のナンバープレートをつけることが義務づけられていることから、自家用のトラックには白地のプレートがついている。

 すなわち、白地のナンバープレートをつけたトラックで、他社の貨物を輸送し、運賃を受け取ることは認められていない。にもかかわらず、例えば他社の荷物を自社の荷物と見せかけるために、商品ごと買い取って輸送するなど、自家輸送を装い、運送事業を営むケースが後を絶たない。「2024年問題」に対応するために、「緑ナンバーを外す」事業者もいる。

 2024年4月、福岡県警は、貨物自動車運送事業法違反の疑いでトラックドライバー4人を逮捕し、幇助などの疑いで水産会社の役員4人を書類送検した。報道によれば、「仲介業者は、『働き方改革に備えてアサリの輸送から正規業者が撤退し、残った業者の運賃も高くなった。収入確保のために白トラックに頼んだ』と供述」している(西日本新聞2024年4月17日)。

 アサリは、山口県下関市から関東地方に運ばれていた。輸送時間だけでもおよそ14時間を要するが、逮捕されたドライバーは「輸送時間が短いことで知られていた」という。県警の内偵によれば、ドライバーはまったく休憩を取らず、到着後も荷卸しを担い、「24時間ほぼ働きっ放しの日もあった」。改善基準告示では、4時間の連続運転後に30分の休憩などが義務づけられており、1日の拘束時間は最大で15時間となっているが、これを遵守すれば鮮度が落ちるため、白ナンバーに依頼することになったと報じられている。


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