多くの開発者がスマホアプリの開発に集中したことで、モバイル・インターネットの開発能力で中国はずば抜けている。原神に代表されるスマホ大作ゲームでは、家庭用ゲーム機やPCゲームにひけを取らないほどの美麗なグラフィックやボリュームを誇るゲームが次々と生み出された。
しかし、このモバイル・インターネットも今や成熟期を迎えている。次にどのようなステージを目指すのか。その答えは簡単ではない。
前述のとおり、中国は21年に厳格なゲーム規制が導入された。中国ゲーム市場の停滞が予想される中、テンセントやネットイースなどの大手ゲームメーカーが構想したのは、海外のゲームスタジオで、海外市場向けのゲームを制作するという構想だった。日本でも大手ゲームスタジオや著名ゲームクリエイターへの投資が話題となった。
しかし、数年が過ぎた今、この道は暗礁に乗り上げている。ゲームの作り方はそれぞれの国で作法が違いすぎる。その文化的摩擦を克服するには時間と多大な労力が必要となる。
ブルームバーグは昨年8月に「テンセントとネットイース、成果乏しく対日ゲーム投資再考」と題した記事を発表している。「数年にわたる対日投資にかかわらずヒット作が生まれず、中国市場が復活を遂げたことが背景」だという。
海外市場も獲得する「大作」は生まれるか?
この動きに拍車をかけたのが、昨年リリースされたゲーム「黒神話・悟空」のヒットだ。中国のゲームスタジオ「ゲーム・サイエンス」が7年がかりで開発したPC及びプレイステーション5向けのゲームだが、リリース1カ月で全世界2000万ダウンロードを記録する記録的なヒットとなった。
中国のゲームスタジオが、中国の神話を舞台としたゲームで、世界的なヒットを飛ばす。この成功によって、外国のクリエイターの提携ではなく、中国のゲーム作りを追求することで世界を攻略できるのではとの機運が生まれた。
現時点ではまだ「黒神話・悟空」の成功にとどまっているだけに、同様の成功が繰り返される保証はない。しかし、今後は中国市場と海外市場を同時に狙った大作ゲームが登場してくるだろう。
そうした大作ゲームが成功できるか? 中国ゲーム産業が次のステージに進めるかどうかの分岐点となりそうだ。