いずれにせよ、選択肢(1)以外のすべての選択肢において、「各国が到達したエネルギー効率化の実績」は考慮されておらず、従って、我が国は突出して高い負担を強いられる。例えば、選択肢(2)を適用した場合の我が国の「限界削減費用」は、米国、EUの1.4倍~4.7倍となり、選択肢(5)を適用した場合は、更に大きく、同4.6倍~8.2倍となる。いずれの場合でも公平性は大きく損なわれる。
なお、言うまでもなく、ポスト京都の枠組み作りにおいては、中国、インド等の新興工業国家との間の負担の公平性をどのように確保するかという大きな問題が残されている。
各選択肢に対応して、その実現のために、如何なる削減策が必要となるか、詳細に示されている。しかし、これらは、同時に、既に最高のエネルギー効率を達成した我が国において、更なる目標数値の達成が如何に難しいかをも如実に示している。
例えば、業務、家庭の部門においては、90年以降、一貫してエネルギー消費は増加しているが、選択肢(3)においては、一転して減少の方向に転じるとしている。そのために必要な対策として、太陽光発電は新築持ち家住宅の7割に導入され、新車販売の50%が次世代自動車になり、新築住宅の80%が省エネ基準を満たすとしている。
選択肢(5)では、更に、太陽光発電は同10割に導入され、新車販売は100%次世代自動車となり、従来型車は車検時に不適合とされる。住宅は、新築・既築を問わず100%省エネ基準を満たすことが義務付けられる。
温暖化問題には、国民全体の真の納得と行動が必要である。しかし、それでも、これらの選択肢実現については、相当困難を伴うと言わざるを得ない。
大きな負担と国民意識の乖離
各選択肢においては、「社会・経済への影響」や「国民の経済的負担」の度合いが、具体的数値によって明らかにされている。
例えば、選択肢(3)においては、基準ケースである選択肢(1)に比べ、実質GDPは、累計で▲0.5~0.6%押し下げられ、20年時点で失業者は11~19万人増加し、標準的家庭当たり可処分所得は年間4~15万円減少し、光熱費は年間2~3万円上昇する。しかも、太陽光発電や次世代自動車等の設備導入等に要する家計負担は、合計で約500万円以上となる。そして、各選択肢の影響数値は、すべて、省エネ投資等対策に伴うプラス効果等も勘案したものであることは、十分留意されるべきである。