米国の対露政策の変化は、北朝鮮に対する米国の政策変化を懸念させる。トランプ大統領は、プーチンと同様、習近平や金正恩との堅固な個人的信頼関係の重要さを繰り返し強調している。
トランプは金正恩と18年と19年に3回も対面会談を行ったが、金正恩は会談再開の見通しに平手をくらわす勢いだ。今月初め北朝鮮外務省は、米国の核軍縮促進を「時代遅れで馬鹿げた計画」だと言い、核戦力強化を続行すると宣告した。
韓国は核軍縮の可能性に関する今後のトランプ・金正恩外交に引き続き関与したいと考えているが、韓国自身が自分たちは脇に追いやられるだろうと認めている。韓国の趙兌烈外相は最近、「北朝鮮やその他の国からの安全保障上の脅威に対処するにあたり、韓国は想定しうるあらゆるシナリオに完全に備えなければならない」と述べつつ、現時点では米国の韓国に対する安全保障上のコミットメントに「疑いは持っていない」と言う。ちなみに韓国駐留米軍の縮小は、韓国内に自前の核開発計画を求める声を加速させるだろう。
日本もその防衛を米国に依存している国の一つである。アジア諸国も米国による追加関税の脅威に直面し、タイやベトナム等数カ国は米新政権による対外援助凍結の影響を受けている。トランプは台湾が米国の半導体ビジネスを奪っていると非難したが、台湾の国家安全保障局の呉委員長は2月20日、その非難には根拠がないとした。
ブルッキングス研究所のリン・クオック研究員は、トランプ大統領は最終的には中国との経済的和解を求める可能性があり、ウクライナ問題での米国の方針変更は、アジアにおける米国の同盟国にその姿勢の再考を促すだろうと言う。「仮に米国が欧州を犠牲にしてプーチンと取引するようになれば、アジア諸国は米国がアジアを犠牲にして習近平と取引する可能性を考えなければならないだろう」と言う。
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集団安全保障に慣れていないアジア諸国
ウクライナ戦争に関するトランプ政権の姿勢には、20世紀の世界の国家関係の支柱として発展定着してきた集団安全保障体制からの離脱という事象を考えさせられる。特に公開されたままの首脳会談の議論からはそのような印象を受ける。
トランプ政権の戦争終結に向けての基本姿勢は、現状の受諾と力関係の認識であり、それを基礎に双方が如何に行動すべきかを判定しようとしている。何れの側が国際法を侵犯した侵略者であり、何れが犠牲者なのかという法的正義に関する評価は、二次的な考慮事象のようである。いや、そもそもの評価事象からほとんど除外されているかのようでもある。