2025年3月31日(月)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2025年2月27日

 フィナンシャル・タイムズ紙のコラムニスト、ギデオン・ラックマンが1月27日付け同紙に“What the global south gets wrong about Trump”(グローバルサウスがトランプについて間違っていること)と題する論説を掲げ「グローバルサウス(GS)諸国は耳障りな説教をしないトランプを支持しているが、トランプはルールに基づく秩序を壊しており、弱肉強食の世界で餌食になる可能性の高いGS諸国のトランプへの称賛は直ぐに消える」と論じている。概要は次の通り。

(libre de droit/gettyimages・dvids)

 ダボスでは西側関係者からはトランプへの非難が聞かれたが、中東、アジア、アフリカの反応は違った。最近の世論調査では、インド、インドネシア、南アフリカ、ブラジルといった国々でのトランプ支持は広範だ。米国大統領は西側以外では、ディール好きでビジネスを支援し平和をもたらす好ましい人物だが、誇大宣伝の先を見ればGS諸国がトランプの米国を強く懸念すべき多くの理由がある。

 トランプは、基本的にはルールに基づく国際秩序を壊している。国際秩序は中国、インド、東南アジア諸国のほとんどが過去30年間裕福になることを可能とした安定と自由市場を提供してきた。このようなルールを破棄した取引のみに基づく世界は強者を制約する枠組みもないので、弱肉強食の世界だが、GS諸国のほとんどは弱者だ。

 「トランプは取引好きで、脅しはディールを作る前哨戦に過ぎず問題ない」と考えるのはビジネスの実態を無視している。国際企業の長期的対外投資には安定的で予測可能な法的枠組が必要だ。

 トランプがディールを守る保証はない。第一期政権時に米国はカナダとメキシコと米・メキシコ・カナダ協定(USMCA)を結んだが、今やトランプは新たな譲歩を要求している。力関係の変化で全ての合意が破られるなら、どんな貿易取引も安全ではない。

 西側関係者は米国大統領がマフィアのボス風に振る舞うのがショックかもしれないが、多くのGS諸国は米国の指導者は宣教師のように語ってもギャングのように行動すると信じている。彼らは、トランプは、「耳障りな説教」はせず、偽善的でない米国の方が西側の価値観で非現実的な要求をしないので扱いやすいと期待している。

 しかし、利他的な行動に関心がないと誇らしく言う米国が如何に醜いかが判明しつつある。ルビオ国務長官はほとんど全ての米国の対外援助を停止した。米国に直接利益がある物のみ再開される。

 HIVとエイズの治療薬提供で数百万の命を救ったPEPFARのような計画は終了しうる。トランプが「肥溜め」と呼んだ国々からの合法的移民減少は米国人には良い政策かもしれないが、GSの中間層には有能な移民や学生用のビザ取得が難しくなる悪いニュースだ。


新着記事

»もっと見る