
ロンドン近郊のヒースロー空港が近くの変電所の火災による停電のため21日に業務を停止した問題で、英政府のエド・ミリバンド・エネルギー相は23日、停電について緊急調査を指示した。
英エネルギー安全保障・ネットゼロ省(DESNZ)は、イギリスの国有送配電企業「ナショナル・エナジー・システム・オペレーター(NESO)」が調査を主導すると発表。今回の火災と停電の「明確な状況」を明らかにし、「二度と起きないように」するためイギリスのエネルギー供給体制の強化を図る方針を示した。
ミリバンド氏は「何が起こったのか、そしてどのような教訓を学ぶ必要があるのかを適切に理解する」として、「重要な国家インフラへのエネルギー供給について、頑健な体制をどう維持できるか、今回の出来事を通じて幅広い教訓が得られるならそれを理解する」ため、調査を指示したと述べた。
イギリスの電力網を運営するNESOは、6週間以内に電力規制機関Ofgemと政府に初期調査結果を報告する予定という。
トーマス・ウォルドバイ最高経営責任者(CEO)は22日夕方に発表した声明で、政府指示の調査を歓迎し、「空港外で起きた昨日の事案の原因と影響を解明するため、あらゆる努力を支援する」と述べた。
ヒースロー空港会長のポール・デイトン卿は、混乱発生について空港として遺憾に思うとコメント。影響を受けた人々が「乗客と同僚の安全を最優先にするため(空港閉鎖の)決定をしたことを理解してほしい」とも述べた。
デイトン卿は、調査が終了したあかつきには、「この前例のない事態から、空港としてあらゆる教訓を見いだすつもりだ」と付け加えた。
他方、空港は声明で、「空港外の停電の原因と対応について政府が調査すると発表したことを歓迎し、元運輸大臣ルース・ケリー氏を議長に、空港の対応点検を開始した」とした。
ロンドン警視庁は、対テロ担当官らが「捜査を指揮している」ものの、不審な事件としては扱っていないとしている。
ヒースロー空港に電力を供給するロンドン西部のノースハイド変電所で20日夜に火災が発生した影響で、21日には1000便以上のフライトが欠航し、世界中で乗客に影響した。
電力供給会社スコティッシュ・アンド・サザン・エレクトリシティ・ネットワークス(SSEN)によると、火災による停電で6万3000戸以上が停電。周辺の住宅から約150人が避難した。
旅客機追跡サイト「 flightradar24.com」によると、ヒースロー空港の閉鎖により約1400便のフライトが欠航し、約120便が行き先を他の場所に変更した。
21日夜に一部のフライトが運航し、ヒースロー空港は22日午前には「全面再開」したと発表。同日は25万人以上の乗客が利用した。同空港は、同日の運航予定に50の発着枠を追加し、追加で1万人の乗客が受け入れ可能になったと説明した。
これを受けて同空港は23日、この日も1300便以上のフライトが離着陸する通常通りのスケジュールで運営すると発表した。
バックアップは停止状態
英送電事業会社ナショナル・グリッド運営の変電所は、適切な電圧レベルで電気を生産、変換、配電するように設計されている。
ヒースロー空港は、それぞれバックアップを備えた3カ所の変電所を使っている。 また、バックアップ用のディーゼル発電機や、航空機の着陸システムなどの安全上重要なシステムの稼働を維持するのに十分な電力を供給する無停電バッテリー駆動装置もある。
しかし、変電所で火災が発生した際、変電所とそのバックアップ設備は機能停止状態だった。
ヒースロー空港は、他の2カ所の変電所に切り替える仕組みになっていたものの、「切り替え」には「時間がかかる」のだと、同空港のウォルドバイCEOはBBCに話した。
ウォルドバイCEOはまた、今回の事態は「ヒースロー空港で起きたのではなく、空港の外で発生したことで、私たちはその影響への対応を求められた」のだと話した。
22日にも欠航や遅延
ヒースロー空港のライブ出発案内板によると、22日は同空港を出発予定だった30便以上が欠航し、15便以上が遅延した。 また、ドーハ、リヤド、ドバイ、マンチェスター、ニューカッスル・アポン・タインなど、各地から同空港に到着する予定だった70便以上が欠航となった。
ファラー・ラフィークさん(24)は友人の結婚式に出席するため、21日に友人とヒースロー空港からカンボジアへ出発する予定だったが、大量の航空便が欠航したため式典の一部を欠席することになった。
結婚披露宴に間に合うよう、23日午後にカンボジアに到着できるロンドン近郊のガトウィック空港発の代替便を見つけたものの、料金は2倍だったという。
(英語記事 Investigation ordered into power outage that closed Heathrow)