2025年3月30日(日)

BBC News

2025年3月24日

カナダのカーニー首相(左)と最大野党・保守党のポワリエーヴル党首

ナディーン・ユーシフ、ジェシカ・マーフィー(カナダ・トロント)

カナダのマーク・カーニー新首相(60)は23日、総選挙を4月28日に実施すると発表した。アメリカと貿易戦争に直面し、ドナルド・トランプ米大統領がカナダはアメリカ51番目の州になるべきだと繰り返す状況での選挙なだけに、トランプ政権への対応が最大の焦点になるとみられる。

与党・自由党を率いるカーニー氏は、9日前にジャスティン・トルドー前首相から首相を引き継いだばかり。

総選挙では、野党・保守党のピエール・ポワリエーヴル党首(45)と対決することになる。保守党は世論調査で2023年半ばからリードし続けてきたが、最近は支持率が拮抗(きっこう)している。

カーニー氏は23日にオタワで演説し、トランプ氏に対処するには、国民の明確で積極的な負託が必要だと主張。

「トランプ大統領の不当な貿易政策や主権に対する脅威のせいで、私たちは生涯で最も重大な危機に直面している」、「アメリカが私たちを我が物にできるようにと、(トランプ氏は)私たちをくじけさせようとしている。そんなことはさせない」と訴えた。

トランプ政権発足以前は、自由党は総選挙になれば政権を失うと予想されていたが、ここに来て、4回連続となる政権発足をカーニー氏の下で実現する可能性が出てきた。

カーニー氏は、英イングランド銀行(中央銀行)とカナダ銀行(同)の元総裁。議員の経験はなく、政治的な力量は未知数だ。

カーニー氏は首相就任後、イギリスのキア・スターマー首相やフランスのエマニュエル・マクロン大統領と会談するなど、就任から間もない時間を最大限に活用してきた。カナダの北極圏を訪れ、オーストラリアと共同で新たなレーダー・システムを開発することも発表した。

さらに、保守党から激しく批判されていた、トルドー政権による気候政策の炭素税を終わらせた。

トランプ関税への対応

カナダの有権者らは、緊密な同盟関係を長年保ってきた対米関係の急変や、物価上昇を懸念している。

保守党のポワリエーヴル党首は、総選挙が発表される直前の政治活動で、不人気だったトルドー前首相が率いた自由党と、カーニー氏を結びつけようとした。

ポワリエーヴル氏は、トルドー政権時代を「失われた自由党の10年」と批評。自由党が資源開発を阻止し、軍に資金を提供せず、移民と経済に関して政策を誤り、国を弱体化させたと非難した。

そして、自由党の「グローバリスト思想」が、トランプ氏の貿易戦争に対してカナダを弱くしたと述べた。

トランプ氏によるカナダ製品への関税措置は、カナダで経済の不安定化と不況を招く可能性がある。

トランプ氏は3月初めにカナダ製品に対して25%の関税を発動。その後、部分的に1カ月間停止した。12日には、すべてのアルミニウムと鉄鋼の輸入品に一律25%の関税をかけ、カナダの輸入業者が打撃を受けた。

カナダ総選挙の選挙戦2週目となる4月2日には、トランプ政権は世界的にさらに関税を引き上げる予定。

カナダはこれまで報復措置として、約600億カナダドル(約6兆2700億円)相当のアメリカ製品に関税をかけている。

カーニー氏は追加の報復措置を約束している。ただ、両国の経済規模の違いから、カナダの関税対応には限界があることを認めている。

一方、ポワリエーヴル氏も、カナダがアメリカの脅しに断固とした対応をしなくてはならないと主張。

「私たちは怒りと不安を行動に変えなければならない」、「アメリカに立ち向かうため、強く、自立し、主権をもつ存在にならなくてはならない」と述べた。

今回の総選挙の選挙運動期間は、規定の中で最短の5週間しかない。アメリカとの関係のほか、生活費の上昇などの経済問題が主な焦点となる。

どんな政党が争うのか

カナダの連邦政府では、首相は有権者の直接投票で選ばれず、通例では議員の数が最も多い政党の党首が首相になる。

今回の総選挙は主に、自由党、保守党、新民主党(NDP)、ブロック・ケベコワ(ケベック連合)の4党で争われる。ブロック・ケベコワは、フランス語圏のケベック州でのみ候補者を擁立し、同州の利益に重点を置いている。

これ以外には、緑の党とカナダ人民党も候補者を立てる。

NDPのジャグミート・シン党首は23日、カーニー氏もポワリエーヴル氏もカナダにとって正しい選択ではないと主張。両氏を、一般国民ではなく富裕層を守っていると非難した。

ブロック・ケベコワは、ケベック州での自由党の支持拡大に直面している。イヴ=フランソワ・ブランシェ党首は、トランプ氏が注目している産業を代弁するのは同党だとアピールした。トランプ氏は、ケベック州の重要産業のアルミニウムや酪農、木材などに興味を示している。

緑の党は、共同党首(ジョナサン・ペドノー氏、エリザベス・メイ氏)の態勢で初めて総選挙に臨む。ペドノー氏は23日、「私たちは、国の命運がかかっているかのように投票しなくてはならない。実際、かつてないほどそうだからだ」と話した。

議会下院の解散と総選挙が発表された時点の各党の保有議席は、自由党153、保守党120、ブロック・ケベコワ33、NDP24、緑の党2、となっている。

(英語記事 Trump looms over Canada's election as campaign begins

提供元:https://www.bbc.com/japanese/articles/cly8qp7elejo


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