
ケリー・アン、BBCニュース
静岡地方裁判所は24日、再審(やり直し裁判)で無罪となるまで約50年もの間、死刑囚として過ごしてきた袴田巌さん(89)に対し、刑事補償として2億1700万円を交付すると決定した。弁護団が25日、明らかにした。日本の刑事事件で過去最大の補償額だという。
袴田さんは、1966年に勤めていた静岡県のみそ製造会社の専務とその妻、10代の子供2人を殺害したとして強盗殺人罪などに問われ、1968年に死刑判決を受けたが、昨年の再審で無罪となった。
袴田さんの弁護団は、47年にわたる拘束が袴田さんの精神の健康に大きな影響を与えたと主張し、法が定める上限額の補償金を請求していた。袴田さんは、世界で最も長く拘置された死刑囚だった。
静岡地裁の國井恒志裁判長は決定にあたり、「袴田さんが被った精神的、身体的苦痛は極めて甚大だ」と認めた。
袴田さんの事件は、日本で最も長く、また最も有名な法的争いの一つだった。
再審請求で弁護側は、犯行時に袴田さんが着ていたとされる衣類に付着した血痕のDNA型が、袴田さんのものとは一致しないとする鑑定結果を提示。静岡地裁は2014年、この信用性を認め、「捜査機関が重要な証拠をねつ造した疑いがある」として、再審開始と袴田さんの釈放を認めた。
昨年9月の静岡地裁での再審の判決当日には、約500人の傍聴希望者が列を作った。無罪判決を受けて、裁判所前に集まった支持者たちからは「万歳」などと歓声が上がった。
しかし、袴田さんはその判決の言い渡しに出席することができなかった。袴田さんは精神状態の悪化により、再審のすべての審理で出廷を免除されていた。
袴田さんは2014年に静岡地裁の決定で釈放された後、姉ひで子さんに支えられながら暮らしている。ひで子さんは何十年間も、弟の名誉回復のために闘ってきた。
袴田さんの事件は再審に要する時間や自白の強要疑惑など、日本の司法制度に多くの疑問を投げかけた。
追加取材:中山千佳、ギャヴィン・バトラー、シャイマ・ハリル
(英語記事 'Record' payout for world's longest-serving death row inmate)