言われるままに枝や梢を落とす。「電線に枝が触れた」「標識が見えない」「敷地を越境した」「毛虫が発生した」「落葉が邪魔」などのクレームが来たら、植物の生理も考えずに機械的に枝や梢を切断することになる。
どう保つのか
観察すると、街路樹にとって生育に適した環境ではないケースが実に多いと感じた。
近年はアニマルウェルフェア(動物福祉)の概念が広がっている。野生動物やペットのほか、家畜や実験動物も健全に飼育することが求められる。
ケージ飼いは否定され、飢えや渇き、病気からの自由、ストレスをかけることを禁止されるようになった。それならばボタニカルウェルフェア(植物福祉)も考えるべきではないか。
まず植える場所には十分な広さを確保してほしい。植栽する樹種も十分に検討した上で、それに合った土壌を入れ、水の供給も十分か調べるべきだろう。そして剪定なども植物に過度なストレスにならないよう施す知識と技術が必要である。
土木技術的には、樹木の根上がりを防ぐ「根系誘導耐圧基盤」という技術も登場している。道路下の土層を改変して、大粒径の粗骨材をかみ合わせて、骨材の隙間に根が伸長できる空間を広げるようにするものだ。
また街路樹を専門に管理する業者からは、次のような提案が上がっている。
「役所の人は街路樹の実態や植物生理をよく知らないし、市民の気持ちも伝わっていません。だから行政に意見を伝えるのは有効です。ただクレームばかりではなく、素敵な管理がされている街路樹を褒める方が効果的です。また落葉を掃除している地元の人にも感謝の意を伝える。それだけで関係者のやる気を喚起して街路樹は変わります」
街路樹の存在が街や人にメリットを与えるのならば、人が街路樹に健全に育つ環境を用意することも大切だろう。