そこで、石橋さんが注目するのは、四死球の数。バレンティンは113個あったのに対し、ブランコは77個しかない。四死球というのは、得点を得るためには重要であることを統計的データが示している。バレンティンは敬遠が9個しかないことを考えると、極めて選球眼がよいことがわかる。ちなみに阿部も四死球は110個と多い。これが貢献度の高い理由の一つでもある。
そしてもう一つ注目すべきデータが、得点機会(ホームベースを踏む回数)。実は、バレンティンは94点でトップなのである。セ・パ両リーグを見渡しても、続くのは、陽岱鋼(北海道日本ハムファイターズ)の93点、長谷川勇也(福岡ソフトバンクホークス)92点など安打を重ねる好打者であることを考慮すると、極めて器用な選手であることがわかる。
ノーステップでミートを心がけるホームランバッター
バレンティンについて、前田健太投手(広島東洋カープ)がこれを裏付ける、興味深いことを語っている。
「選球眼がよい」「2ストライクに追い込まれるとノーステップになる」
選球眼は、だれでもわかるが、ノーステップになるというのはどういうことか。
ホームラン打者は、バットをボールに当ていくとき、軸足ではない足を高くあげ、投手よりに大きく踏み込む。体重移動のパワーをボールに伝えるためだ。しかし、当たった時の破壊力はすごいが、目の上下動が大きく、ボールの芯をとらえる確率が低くなる欠点がある。ステップしたときの、目の上下動が極めて少ないのが、イチロー(ニューヨーク・ヤンキース)だ。わずか2センチしかない。全盛期の松井秀喜でさえ10センチは超えていた。
ノーステップというのは、足を踏み込まないということである。最初から広めのスタンス(足幅)をとって、全くステップせずに体重移動だけでスイングする技術である。これによって目の上下動がイチロー並に小さくなる。
バレンティンは、確かに2ストライク後、ノーステップになり、ボールをミートすることを心がける。それでもホームランになってしまうのは、もちろんパワーと技術があるということだが、苦手なコースがないことも大きい。