プロ野球セ・パの公式戦が開幕した。昨年のパ・リーグの覇者で、日本シリーズも制した、東北楽天ゴールデンイーグルスは、田中将大投手が抜けた穴をどう埋めるか課題も多く、セ・リーグチャンピオンの読売ジャイアンツも投打ともに決定的な力はなく、両リーグとも混戦が予想される。
それだけ面白いシーズンとなるが、まずは野球の醍醐味である打撃に注目したい。科学的データをもとに分析すると、昨年、最もチームの得点力向上に貢献したのは、本塁打60号の日本新記録を樹立したバレンティン(東京ヤクルトスワローズ)。一見、当たり前に見えるが、実はバレンティンは従来のホームラン打者にない意外な特長を持っている。バレンティンのすごさはどこにあるのか、得点への貢献とは何か、本塁打王の行方は、今シーズン期待できる選手はだれか探っていく。
他をよせつけないバレンティンの得点貢献度
まずは、昨年のセ・リーグ打撃上位の成績を見て欲しい。バレンティン、ブランコ(横浜DeNAベイスターズ)、阿部慎之助(読売ジャイアンツ)。バレンティンの本塁打数は群を抜くが、ブランコもけっして劣らない。阿部も健闘しているが、数字上はやはり見劣りする。
しかし、選手の膨大なデータを、様々な角度から数値化し、選手の成績を客観的に評価する「セイバーメトリクス」のふるいにかけると、別の違った側面が見えてくる。セイバーメトリクスは、この連載2回目の菅野智之(読売ジャイアンツ)のところで紹介したので参照してほしい。
セイバーメトリクスの中で、チームが得点をするときの個々の選手の貢献度を数値化したものに「XR(eXtrapolated Runs)」と「wOBA(Weighted On Base Average)」というのがある。
XRは、得点に絡む能力、簡単に言えば、チームが得点した時にヒット、四死球、犠打などで何らかに貢献した回数と相関関係が高い。100を超えれば、それは一流の証明とされる。