しかし、成長が鈍化し始めたのが2000年代後半頃。10代後半や20代前半のころからの顧客が30~40代になるにつれて、「オイルフリー」というコンセプトが若い層向けの化粧品、と受け取られたのか、リピート率や顧客単価の低下が目立ってきた。オルビスとして、何をするべきなのか。そこで考えたのが「ブランドの再構築」だったという。
「ブランドコンセプトが曖昧になっていないか。ブランドを立ち上げたときの革新的な取り組みを思い出すべく、もう一度、一から始める気持ちでやってみようと。これにあたり、インターナルブランディング(従業員の意識改革)にも力を入れようということになりました。人が変わらないと会社も変わらないと思ったのです」(小川課長)
核となる8人の社員を中心に、最初の段階でつくったのが「オルビススタイル」という行動指針だった。「方程式から抜け出し、仕事を遊ぶ大胆さを」「まず、目の前の仕事を革新してみる」といった7つの言葉のうちのひとつに、「NOよりYES。チャレンジの芽を育てていく」というものがある。取材の中で「ポーラと比べるとオルビスは大人しい社風」という話も聞いたが、殻を脱ぎ捨てるような突破力が必要だった時期なのかもしれない。
「オルビススタイル」ができたあと、「どういう会社にしていきたいか」という全社員参加のワークショップが何度も開催された。「会社を良くできると思うことを何でも出して」という呼びかけを行い、集まった意見のひとつが、長い間社員の念願だった「社員食堂がほしい」というものだったという。
このビルに社員食堂をつくることは難しい。しかし、「“NOよりYES”の精神で、最初から無理と決めつけずに検討してみよう」という方向に動き、社員食堂の設立が本格的に検討され始めた。