2025年12月20日(土)

勝負の分かれ目

2025年5月11日

 MFながら5得点2アシストを記録し、リーズのチャンピオンシップ(イングランド2部に相当)優勝とプレミアリーグ昇格に大きく貢献すると、チャンピオンシップのベスト11に選ばれた。田中は自身のインスタグラムで、ここまで時間がかかってしまったという思いを明かしたが、慣れない環境でもすぐに適応してチームにフィットできたのは、間違いなくデュッセルドルフでの3年間があったからだろう。

日本人への理解があるチームへ

 最近の興味深い事例が、柏レイソルからフランスに渡った日本代表の関根大輝(スタッド・ランス)だ。187cmの体格ながらボールテクニックにも優れる右サイドバックは拓殖大学の4年生で、柏と正式にプロ契約。大学生Jリーガーとして注目を集めて、昨年夏のパリ五輪にも出場した。そして今年の1月に伊東純也、中村敬斗が所属するスタッド・ランスに完全移籍で加入すると、徐々に評価を高めて主力に定着した。

関根大輝(右)は、伊東純也や中村敬斗がすでに移籍していたことから、チームに順応しやすい環境にあった(REX/アフロ)

 ランスはフランク王国始まりの地としても知られる歴史的な町だが、パリのような大都市ではなく、日本人が生活するために何もかも揃っているわけではない。そうした環境に単身で飛び込んだ関根だが、伊東や中村がすでに活躍しており、チーム内の日本人理解もあること、何より二人の助けが関根にとっては大きなプラスになっているようだ。関根によれば伊東の家族にも食事面などでお世話になることがあるという。

 伊東は関根と同じ柏からベルギーのゲンクに移籍し、5シーズンの活躍が認められて、5大リーグの一つであるリーグアン(フランス1部)のスタッド・ランスに加入して4年目。中村はガンバ大阪からオランダ、ベルギー、フランスの計4クラブを渡り歩きながら経験と評価を積み上げて、23年の夏から同クラブに在籍しているが、関根はより恵まれた環境で成長を続けている。ここからどういう成功の道を進んでいくのか楽しみだ。

環境にどう向かい、成長につなげるか

 海外では外国人の〝助っ人〟として見られることも多い中で、日本人選手が異なる環境に適応し、活躍を続けることは決して簡単なことではないが、それぞれの置かれた環境の中で自分を表現し、価値を高めていくということは人間としても、その選手を強くする原動力となりやすい。もちろん日本のプロリーグであるJリーグで活躍することも素晴らしいことだが、海外で挑戦するからこそ得られるタフさや周りに伝える力というのは”森保ジャパン”のチーム力を引き上げる要因になっていることは確かだ。

 日本人が海外に挑戦する意味はサッカーに限ったことではなく、学業やビジネスにも通じるものだ。ただ、確実に言えることは1つの正解というものがなく、その環境をどう前向きに生かして、成長に繋げていけるかだろう。

 最初は日本人が過ごしやすく、周りのサポートがある環境でスタートすることも良いし、あえて厳しいところに飛び込むことも素晴らしい挑戦だ。その環境を楽しむというのは海外で成長し、日本代表で活躍する選手に共通する成功の鍵だ。

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