日本人サッカー選手の海外移籍が活発だ。欧州の”5大リーグ”と呼ばれるイングランド、スペイン、イタリア、ドイツ、フランスに加えてオランダやポルトガル、ベルギーなどの主要リーグの1部と2部に限っても、60人を超える選手たちが異国の環境で挑戦し続けているのだ。
2026年の北中米ワールドカップ(W杯)出場を決めた、森保一監督が率いる男子日本代表も、今年3月に招集された27人のうち、21人が”欧州組”だった。
久保建英(レアル・ソシエダ/スペイン)や三笘薫(ブライトン/イングランド)ら、彼らのほとんどはJリーグに在籍した経験のある選手だ。そして、パリオリンピック(五輪)で日本の主力をになった松木玖生(ギョズテペ/トルコ)が、FC東京でプロデビューしてから3年目の夏に欧州移籍したように、早い段階から海を渡るケースも増えている。さらにチェイス・アンリ(シュトゥットガルト/ドイツ)のようなJリーグでプロデビューすることなく、高校卒業とともに海を渡る有望選手も珍しくなくなってきているのだ。
海外挑戦で、能力以上に大事なもの
若い選手の欧州挑戦で代表例と言えるのが、将来の日本代表のエース候補としても期待される後藤啓介(アンデルレヒト/ベルギー)だ。ジュビロ磐田の下部組織で育ち、高校2年生の時にプロ契約した後藤は23年にJ2で7得点を記録し、磐田のJ1昇格に大きく貢献すると、ベルギーリーグで優勝34回を誇る名門への期限付き移籍が決まった。
当初はアンデルレヒトのセカンドチームであるベルギー2部RSCAフューチャーズの所属だったが、身長191センチ(cm)のサイズと高い技術、非凡な攻撃センスを発揮してゴールを量産するなど価値をアピール。24年12月5日に、磐田からアンデルレヒトに完全移籍することが発表された。
推定3億円とも言われた移籍金が、最終的にどれだけ磐田に支払われたかは不明だが、その後、順調にトップチームでのデビューを果たすと、プレーオフのアントワープ戦で勝利につながる得点を記録するなど、経験を重ねながら選手としての価値を高めている。
その後藤にも言えることだが、海外で活躍するためにテクニックやスピード、パワーといった選手としての能力と同等以上に、海外で大事になってくるのが、メンタル的な強さとコミュニケーション能力だ。
メンタル的な強さは海外で活躍する選手がほぼ例外なく持っている資質であり、日本代表に選ばれるような選手であればなおさらだ。コミュニケーション能力も、日本人選手が現地の環境に溶け込んでいくために欠かせない要素だが、選手のキャラクターによって表現方法は変わってくる。