2018年2月、第一次トランプ政権下で承認され、現在では機密解除されている「インド太平洋戦略枠組み」。これは、中国の影響力が増大していることに対抗して、米国の同盟関係を強化し、インド太平洋の地域全体で米国の優位性を維持するための戦略を概説したものである。
第二次トランプ政権の同地域に対する政策がこれまでのアプローチとどのように異なり、どのような継続性があるのかということに世界中が注目している。そこで本稿では、第一次・第二次トランプ政権の戦略的優先順位や対中アプローチ、同盟関係の管理やインド太平洋における経済的関与について検討することで、それぞれの政権の政策を比較する。
第一次トランプ政権の「インド太平洋戦略枠組み」は、米国の戦略について明確なビジョンを示しており、この地域での「米国の戦略的優位性」の維持と、「自由な未来像と抑圧的な未来像の間の対立の高まり」への対抗が必要だとしている。
同文書の特徴としてまず挙げられるのは、米国にとっての主要な課題は中国であり、次いで北朝鮮であることを明確に位置付けていることだ。そして、強固な軍事態勢と経済競争力を保持すること、日本やインド、豪州といった同盟国への支援について強調している。
また、「第一列島線」内での中国の支配を否定し、台湾のような同盟国を擁護することで「自由主義的経済秩序」を促進すると掲げられていた。これは、政権内の安全保障担当者たちにしばしば緩和されたが、トランプ大統領による「アメリカ・ファースト」のナショナリズムと、より広範な戦略的競争という視点の融合を反映したものである。
第二次政権では、早い段階から大国間競争(特に中国)を優先させる点で継続性が示唆されている。24年の選挙では、対中強硬姿勢が強調され、関税の引き上げと対中依存度の低減が公約として掲げられた。マルコ・ルビオのような対中国タカ派として著名な人物を国務長官に抜擢し、(5月1日に解任されたが)マイク・ウォルツを国家安全保障問題担当大統領補佐官に指名するなど、中国との戦略的なライバル関係をさらに強化する意図を示唆している。
「枠組み」は依然として基本的文書として存在するが、第二次政権はまだ新しい戦略的文書を発表していない。しかしながら、軍事的抑止力と中国の影響力への対抗に焦点を当てたこの枠組みは、「米国の強さを取り戻す」という大統領の公約と一致している。そのため、この中核的な考え方に第二次政権の考え方を反映し、より一方的な内容に仕上がるかもしれないが、今後も維持されていく可能性があるだろう。
枠組みで詳述されているように、第一次政権の対中アプローチは包括的であり、地域の平和が中国に脅かされるリスクを認識していた。また、世界市場が中国の産業政策と不公正な貿易慣行によって歪められることを防ぐことを求めていた。