特に、南シナ海と台湾周辺における侵略を抑止する軍事力の構築が主題とされた。これは海軍のパトロール強化などの行動にもつながり、18年に始まった貿易戦争では数千億ドルの中国製品に関税を課すなど、中国企業への制裁も実行された。また豪州の例に習い、中国の影響力行使に対抗するための同盟国との情報共有も強調された。
一方で、第二次政権ではこの対立をより経済的な焦点から激化させる構えのようだ。中国との関税争いがエスカレートしていることは、軍事中心の抑止力よりも経済的なデカップリングへの移行を示唆している。
第一次政権が貿易圧力と戦略的軍事態勢のバランスをとっていたのに対し、第二次政権では経済戦争がより優先され、ネットワーク化された地域的安全保障の構造を重視する枠組みが傍観される可能性がある。
再び強まる米国の圧力
その背景にある「目的」
25年初期のトランプ大統領の上級顧問による声明は、国内製造業へのインセンティブを通じて中国に「対抗」する意向を示している。これは、第一次政権が環太平洋連携協定(TPP)離脱以降になんとか維持してきた「自由主義的経済秩序」の枠組みからの逸脱である。
第一次政権の枠組みは、インド太平洋戦略にとって米国の同盟関係が極めて重要であることを強調し、「インド太平洋戦略を豪州、インド、日本の戦略と整合させ」、三国間および四国間協力を深化させることを目指していた。さらに、インドのことは「ネットワークの安全保障提供国」と位置づけ、中国に対する軍事力の強化を図った。この政策は、20年のインドと中国の国境紛争における情報支援にも表れている。
しかし、トランプ大統領が好んだ外交スタイルは、しばしば二国間の直接的な関与を重視し、同盟国やパートナー国に対してより高い防衛貢献を求める圧力をかけた。貿易不均衡への批判と相まって、同盟国やパートナー国に対し、防衛費の増額を求める圧力が再び強まっている。
第二次政権の同盟国へのアプローチは、より取引重視に見えるが、これはトランプ大統領が長年重視してきた軍事費用の分担や包括的な二国間協定の方針と一致している。トランプ大統領は最近、日本や韓国のような同盟国に対し、米軍の駐留経費の負担増を求め始めているが、その目的は「中国に対する統一戦線を維持すること」にある。
インドは依然として重要なパートナーだ。モディ首相は選挙後、早くからトランプ大統領に働きかけ、米印戦略パートナーシップの継続を示唆した。第一次政権で重視された四国間協力は、貿易紛争が永続的な合意に移行すれば、さらに重視されるようになるかもしれない。
