2025年12月6日(土)

Wedge OPINION

2025年5月23日

 経済面では、第一次政権の枠組みは「中国の略奪的経済慣行」に対抗し、米国主導の貿易基準を促進することを目的としており、米国の利益に有利な地域経済を再編成するための協調的な努力を反映していた。このアプローチは、補助金、知的財産の窃盗、市場支配を特徴とする中国の経済モデルを、中国の自由市場競争の原則に対する直接的な挑戦として認識することに根ざしていた。

懸念される外交の過激化
「試金石」となる枠組み

 この枠組みは、こうした慣行から米国産業を保護するための措置を提唱し、中国のサプライチェーンへの依存を減らし、インド太平洋諸国が米国中心の貿易規範に合わせるように促す、より広範な地域経済秩序を構想している。にもかかわらず、第一次政権では貿易制裁や輸出規制といった一方的な手段に大きく傾き、中国に圧力をかけるとともに米国のこの地域における経済的リーダーシップを遂行しようとした。

 第二次政権の経済政策は、主要な製造業やエネルギー関連の能力などを国内回帰させ、米国の経済的独立性の回復に焦点を置いている。大統領は「米国のエネルギー優位性の解放」と「製造業の国内回帰」を強調し、地域経済統合はあまり重視していない。これは第一次政権が目指した経済的秩序のネットワーク構築から後退する結果になりかねない。

 第一次政権は、中国に対抗して同盟関係を強化し、米国の優位性を主張することに重点を置くことで、インド太平洋地域における米国の政策の戦略的基礎を築いた。第二次政権は、対中国という枠組みを維持しながらも、経済ナショナリズムと取引外交、特に国内経済の発展を多国間協定よりも優位に置くことをより強く打ち出している。

 また、第一次政権では「米国第一主義」と「他国との戦略的協力のバランス」を取っていたが、現政権では前者により重きを置き、より過激な外交政策によってそれが裏打ちされる可能性がある。「枠組み」は依然として試金石であるが、現政権下では、第一次政権の教訓を踏まえ、より微妙なアプローチが反映されることになるだろう。

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Wedge 2025年6月号より
日本のコンテンツが世界へ羽ばたく時
日本のコンテンツが世界へ羽ばたく時

日本のマンガやアニメに向けられる視線が熱くなっている。世界での熱狂を背に、政府は「新たなクールジャパン戦略」として、コンテンツ産業を中核にすえた〝リブート(再起動)版〟を示した。ただ、人々を魅了するコンテンツはお金をかければ生まれるものではない。今度こそ「基幹産業」として飛躍するために、必要な戦略を探ろう。


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