2025年12月5日(金)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2025年5月22日

 トランプ政権の要求は 4月11日付の書簡に列挙され、大学運営の細部に干渉するその内容には驚愕する。政権の大学に対する攻撃は表面的には「反ユダヤ主義」の排除を装っているが、それは口実に過ぎないことは最早明白であり、大学を政府の管理下に置こうとする試みに他ならない。

 ハーバードの拒否回答を受けて、4月14日、トランプ政権は同大学に対する22億ドルの助成金を凍結した。5月2日、トランプはハーバードの免税特権を取り消すと表明した。

 その他、ビザの発給停止によりハーバードの外国人学生(全体の27%を占める)の受け入れを妨害し、あるいはハーバードの基金に課税を検討する動きも報じられている。4月21日、ハーバードはマサチューセッツ州の連邦地裁に提訴した。

 大学構内におけるイスラエルのガザ攻撃への抗議運動は「反ユダヤ主義」とは別のはずであるが、これに「反ユダヤ主義」のレッテルをトランプ政権は貼った。それを理由に、外部の監査官による、学生、教授、職員、指導部の「観点の多様性」の監査を大学に強要するという露骨な干渉が許されて良いはずはない。学長のアラン・ガーバー(ユダヤ系米国人)は学内コミュニティに宛てたメッセージで「何を教え、誰を入学させ雇用するか、どの分野の研究と調査を追及するか」について政府の干渉は排除されるべきことを述べている。

法廷で戦う重要性

 その権威と強固な財政基盤(532億ドルの巨額の基金を有する)があってハーバードにだけ可能だった抵抗かもしれないが、他の大学を奮い立たせたであろう。

 コロンビアは脱落したが、各個撃破を防ぐため結束して戦う必要がある。コロンビアの他にも、プリンストン、コーネル等の諸大学に対する助成金が凍結されている模様で、アイビーリーグ8大学のうち難を免れているのはイエールとダートマスだけである。法律事務所の結束の状況は甚だしく心許ないが、戦うことに決めた事務所は結束して戦う必要がある。

 この記事が末段で言及しているように、トランプ政権との交渉は問題の解決にならない恐れがある。法廷で結束して戦うことに徹することが賢明な策と思われる。

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