2025年6月22日(日)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2025年5月22日

 2025年4月24日付のEconomist 誌が、最近の最高裁の判例に徴すれば、トランプ政権の大学と法律事務所に対する威圧的行動は憲法修正第一条の違反に当たると思われ、いずれ最高裁が対決の場になるのではないかとの記事を掲載している。

(Marcio Silva/gettyimages・dvids)

 18年2月、フロリダ州パークランドの高校である十代の男が14人の高校生に銃を乱射して殺害した。米国の銃団体の弱体化を企て、ニューヨーク州の金融サービス規制当局長を務めるマリア・ブーロ(Maria Vullo)はロンドンの世界的な保険市場ロイズ・オブ・ロンドン(Lloyd’s、ロイズ保険組合) に対し、仮に、全米ライフル協会(National Rifle Association、NRA)への保険提供を停止しても、州政府は規制違反として調査しないと告げた。

 Lloyd’sはこの取引に乗り、NRAは、政治的理由でNRAのビジネスを窒息させることは憲法修正第一条の違反であると提訴した。昨年5月30日、最高裁は判事全員一致でこの見解に同意した。NRA v Vullo の判決を書いたソニア・ソトマイヤーは「政府の官吏は政府が嫌悪する見解を処罰しまたは抑圧するために民間の当事者の威圧を企てることは認められない」と指摘した。

 トランプがその見解を嫌悪する組織に対する威圧は彼の第二期政権に固有の特徴となっている。NRA v Vullo の判決は、米国の市民社会に対するトランプの攻撃は違憲であることを示唆する。

 就任以来、彼は或る通信社の言葉使いを理由に執務室から追い出し、ハーバード大学には政府の管理下で「観点の多様性」を実行しなければ助成金を失うと告げた。免税特権を剥奪することによって近く非営利団体をつけ狙うことになるかも知れない。

 彼の標的の多くは、エスカレーションを怖れて訴訟に訴えることを躊躇している。しかし、幾つかのエリート法律事務所は訴訟に訴えた。

 トランプの法律事務所に対する攻撃は復讐目的で始まった。彼の政敵を代表し彼が嫌悪する人達を雇用する事務所を標的とした。

 彼の最初の大統領令はコヴィントン&バーリング法律事務所(Covington & Burling)に対し、次はパーキンス・クイ法律事務所(Perkins Coie)、ポール・ワイス・リフキンド・ワートン・ギャリソン法律事務所(Paul Weiss)、ウィルマー・カトラー・ピッカリング・ヘイル・アンド・ドーア(WilmerHale)他二つで、これら事務所の弁護士は連邦政府へのアクセスを失い、顧客はこれら事務所との関係を維持すると政府との契約をリスクに晒すと警告された。


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