2025年12月5日(金)

商いのレッスン

2025年5月31日

自省の指針「八つの心」

 売り手よし、買い手よし、世間よしを企業理念に据え、日々の商いで実践する企業がある。菓子製造販売業「たねや」である。材木商から興り、1872年に7代目当主の山本久吉が菓子業の初代として創業。以来、己の儲けよりも、お客様や周囲の人々、自然、そして「今」だけではなく先のことを優先する商いを続けてきた。

 従業員重視の姿勢は、従業員の働きがいの追求、つまり「店よし」に見られる。現場スタッフの声を尊重し、商品や接客改善に反映させ、人を育てることを経営の柱に据えている。

 しかし、理念は掲げるだけでは絵に描いた餅にすぎない。日々の実践とそれを律する行動指針を伴ってこそ意味がある。たねやの憲法「末廣正統苑」にある「八つの心」がそれにあたる。

 一つ 私は素直な心でいただろうか/二つ 私は人様の無事と倖せを祈る心を忘れはしなかっただろうか/三つ 私は正直と敬う心を持っていただろうか/四つ 私は装う心を大切にしていただろうか/五つ 私は手塩に掛ける心を忘れてはいなかったか/六つ 私は感謝の心をもっていただろうか/七つ 私は親切の心を大切にしていただろうか/八つ 私は活き活きする前進の心をもっていただろうか

 同社ではこれを朝夕、全員が唱和し、決意と反省を繰り返す。この積み重ねにより、企業の、そして、従業員の価値観は変わっていくはずだ。

店よし客よし世間よし
近江商人の三方よしに
未来よしを加えた
四方よしをめざそう
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Wedge 2025年6月号より
日本のコンテンツが世界へ羽ばたく時
日本のコンテンツが世界へ羽ばたく時

日本のマンガやアニメに向けられる視線が熱くなっている。世界での熱狂を背に、政府は「新たなクールジャパン戦略」として、コンテンツ産業を中核にすえた〝リブート(再起動)版〟を示した。ただ、人々を魅了するコンテンツはお金をかければ生まれるものではない。今度こそ「基幹産業」として飛躍するために、必要な戦略を探ろう。


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