自省の指針「八つの心」
売り手よし、買い手よし、世間よしを企業理念に据え、日々の商いで実践する企業がある。菓子製造販売業「たねや」である。材木商から興り、1872年に7代目当主の山本久吉が菓子業の初代として創業。以来、己の儲けよりも、お客様や周囲の人々、自然、そして「今」だけではなく先のことを優先する商いを続けてきた。
従業員重視の姿勢は、従業員の働きがいの追求、つまり「店よし」に見られる。現場スタッフの声を尊重し、商品や接客改善に反映させ、人を育てることを経営の柱に据えている。
しかし、理念は掲げるだけでは絵に描いた餅にすぎない。日々の実践とそれを律する行動指針を伴ってこそ意味がある。たねやの憲法「末廣正統苑」にある「八つの心」がそれにあたる。
一つ 私は素直な心でいただろうか/二つ 私は人様の無事と倖せを祈る心を忘れはしなかっただろうか/三つ 私は正直と敬う心を持っていただろうか/四つ 私は装う心を大切にしていただろうか/五つ 私は手塩に掛ける心を忘れてはいなかったか/六つ 私は感謝の心をもっていただろうか/七つ 私は親切の心を大切にしていただろうか/八つ 私は活き活きする前進の心をもっていただろうか
同社ではこれを朝夕、全員が唱和し、決意と反省を繰り返す。この積み重ねにより、企業の、そして、従業員の価値観は変わっていくはずだ。
店よし客よし世間よし
近江商人の三方よしに
未来よしを加えた
四方よしをめざそう
近江商人の三方よしに
未来よしを加えた
四方よしをめざそう
