2025年12月5日(金)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2025年6月2日

 しかしながらクレムリンのペスコフ報道官によれば、この「作業」をいつ開始すべきかについては何らのデッドラインも設けられておらず、戦争の終結に向けた具体的な作業計画がある訳でもない。

 一方トランプは、今回の電話会談で主目的であったはずの即時停戦について成果を上げることができず、会談後の発言はその失敗を糊塗することに終始した。

 トランプは会談後にゼレンスキーや欧州の主要国首脳と電話会談を行ったとした上で、「ウ露両国は直ちに停戦に向けた交渉を開始することで合意した」と述べているが、ロシアに交渉を急ぐ意思がないことは上記のとおりである。

急務となる経済制裁

 トランプは、「交渉が行われる」との期待から対露追加制裁も行う意思がない旨を述べているが、これは欧州・ウクライナ側が示した「停戦→交渉」という順序を「交渉→停戦」に逆転させて時間稼ぎをするプーチンの作戦に完全に乗っかっていることを示している。

 プーチンがその対応を変えるのは、政治的・軍事的・経済的に自分たちが不利に立たされていると認識する時だけである。トランプ政権は制裁すれば交渉に乗ってこないと主張する。しかし制裁を科した時はロシアが「制裁には屈しない」との意思を示すであろうが、それによって全般情勢が自己にとり不利に展開していく中で、譲歩に応じてくるのである。

 欧州に続き米国においても、大規模対露制裁法案につきグラハム上院議員を中心にすでに多くの支持者を確保しており、この動きを停滞させることなく進めていくことが急務である。

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