巨星、逝く。
長嶋茂雄のことだ。
やっぱり大スターだった。そう認めざるを得ない。たとえ量子のレベルから生粋のドラゴンズファンかつアンチ・ジャイアンツの筆者であっても、そこは肯じるしかない。
なぜか。まず、スター性だ。
華があった。成績より「華」だ。まるでAO入試のようだが、案外、人ってこっちの方が好きだ。
長嶋のプレーを現在進行形で見た野球少年たちにとっての最高のポジションといえば「3番サード」だった。
当時、最強の打者は「4番を打つ」と相場は決まっていても、長嶋が3番なら、それが最高の打順としてまかり通ってしまう。そんな力があった。
まさしく属人的支配の存在を、やんわり子どもたちに教えてくれたのがミスターだ。
後に筆者も学んだ。
公的には副総理でしかない鄧小平が中国を操り、アメリカのフーバーは米連邦捜査局(FBI)長官として歴代の大統領を震え上がらせた。日本では闇将軍と呼ばれた田中角栄が日本を裏から支配した。みな肩書より大きな個人の力を持っていた。だから3番なのに4番以上の……。
うん? 何かが違うな。
ミスターをそんな恐ろしい人々と一緒に並べちゃいけない。
簡単に言えば、チャンスに強いとか、プレーがダイナミックとか、見ていて面白いといった数値化できない要素がミスターにはあったという話だ。
そのことは敵チームの視点で見ても明らかだった。