2022年のプロ野球ペナントレースが大詰めを迎えた。セ・リーグは東京ヤクルトスワローズが25日、29年ぶりの連覇を達成した。順位表に目をやると、最下位は中日ドラゴンズ。ヤクルトには27日現在、15ゲームの大差をつけられている。
振り返れば中日は、落合博満監督が率いていた2011年を最後にリーグ優勝から遠ざかり、近年はBクラスが定位置となっている。落合監督時代の8年間は、リーグ優勝4回で、2位が3回、3位1回。一度もBクラスに転落することはなかった。
まばゆいばかりの好成績を残した「落合竜」だったが、なぜか選手やフロント、さらに親会社からも「嫌われ」ることになってしまった。1年前、落合の中日監督時代について掘り起こした元日刊スポーツ記者、鈴木忠平の『嫌われた監督』(文芸春秋)がベストセラーになった。同書で鈴木は関係者の証言を積み重ね、監督・落合の実像に迫って好感が持てた。
私自身もプロ野球記者として、選手時代から落合博満という実に魅力的で同時に謎の多い人物を取材してきた。『嫌われた監督』(文芸春秋)と、落合自身が以前に出した著書を読み比べながら、落合という稀代の天才野球人の「魅力」と「謎」に迫ってみたい。
決してエリートではなかった選手・落合の歩み
今回選んだ3冊のほかにもいわゆる「落合本」はさまざま出版されているが、発行年代ごとにタイムリーと思われるものを選んだ。『なんと言われようとオレ流さ』(講談社)は、ロッテ時代の落合が85年に2度目の三冠王を獲得した後の86年4月に出版された。
『勝負の方程式』(小学館)は中日から巨人へ移籍した94年6月に出版された。通算2000本安打まで133本まで迫り、選手としてのピークは過ぎ、「引退」の2文字が自身の頭によぎり始めたころだ。
『采配』(ダイヤモンド社)は8年間の中日監督を卒業した直後の2011年11月の出版だ。監督として実績を残し、選手の育成方法から常勝チームの作り方まで自信をもって世に問う形をとっている。
落合の生い立ちからプロ野球の世界に足を踏み込むまでの経歴が細かく書かれているのが『オレ流』だ。プロ野球選手と言えば、エリート中のエリート。甲子園や大学野球、社会人野球など、アマチュア時代から華々しく活躍した選手たちが集うところと思われ方だが、落合ほど「正反対」の道を歩んできた選手はほかにいない。