燕の勢いが凄まじい。東京ヤクルトスワローズが球団初の2年連続セ・リーグ制覇と日本一に向け、ペナントレースを独走している。7月2日に2リーグ制となってから史上最速でマジックナンバー「53」が点灯。5月14日、15日の広島東洋カープ戦(1勝1分け)から数えて14カード連続の勝ち越しを7月3日の横浜DeNAベイスターズ戦で決め、球団記録を更新するなど、その後も手綱を緩める気配は特段見られない。
7月5日に敵地・東京ドームで行われたセ2位・巨人との「直接対決」第1ラウンドは1―4で黒星を喫した。とはいえ、この試合を落としても巨人との差は依然として12.5ゲームもある。この3連戦を15カードぶりに負け越そうが、もしくは3タテを食らわされようが、ヤクルトにとって慌てる必要はない。掛け値なしに「直接対決」というフレーズが虚しく聞こえてしまうほど、今のヤクルトの強さは際立っている。
なぜ、ここまで強いのか。無論それだけではないが、1つの理由として高津臣吾監督のチームマネジメントが非常に優れていることが挙げられるのは間違いない。
補強なし、主力欠けても戦える危機管理能力
昨オフは特に大きな補強へ動くことなく、今季もほぼ現有戦力で戦い続けている。それでも投打のバランスの良さは12球団随一と評していい。これは指揮官がかねてから各選手の役割分担を明確化させ、試合中も的確な状況判断とともに見事なベンチワークを駆使していることの賜物である。
昨季9勝でチームトップタイの3年目右腕・奥川恭伸投手は上半身のコンディション不良のため開幕早々から戦線離脱を強いられ、2軍調整中。本来なら大ダメージとなるところだが、今のヤクルトは主力の誰かが欠けてもウィークポイントを補えるだけの戦力が十分に整っている。
これもまた、さまざまなアクシデントを想定し、対応できるだけの選択肢をあらかじめ準備している高津監督の高い危機管理能力の証明につながるだろう。投手出身の指揮官らしく、ピッチングスタッフのスペシャリストとしてモチベーターの働きをこなす側面もいい意味で顔をのぞかせ、結果的に投手陣全体の安定化につながっているところが大きい。
それが証拠に奥川が欠けても先発陣には現状、力強い顔ぶれが揃う。エース・小川泰弘投手は序盤こそ波に乗り切れなかったものの、徐々に本来の力を発揮。5月3日・阪神タイガース戦で今季初完封を飾って以降は登板7試合を全てクオリティスタートの内容で試合をつくり、防御率もセ2位の2.29(7月5日現在)と優れた数値で先発陣をけん引している。
昨年ブレイクした高卒7年目左腕・高橋奎二投手は7月5日の巨人戦登板で敗戦投手となったが、6勝でチームトップ。42歳のベテラン・石川雅規投手も4勝し、先発ローテの軸となっている。