2024年4月20日(土)

勝負の分かれ目

2021年12月7日

「名将」への階段を昇り始めたと言っていいだろう。プロ野球の東京ヤクルトスワローズを率いた高津臣吾監督が就任2年目にしてチームを6年ぶりのセ・リーグ優勝、そして20年ぶりとなる日本一へと導いた。

 前年リーグ最下位に沈み、今季開幕前の下馬評でヤクルトをV候補に挙げる評論家やプロ野球界OBは皆無に等しかったものの、終わってみれば燕軍団が12球団の頂点に到達。チーム躍進の大きな理由として選手個々の奮闘が実を結んだことは言うまでもないが、高津監督のマネジメントが際立っていた点も抜きには語れない。

MLBのシカゴ・ホワイトソックスでのプレー経験が生かし、日本一へと導いた高津臣吾監督(アフロ)

ポストシーズンで見せた投手起用の妙手

 リーグ優勝を決めて臨んだポストシーズンの采配も「見事」の一言だった。クライマックスシリーズ(CS)ファイナルステージ(S)ではリーグ3位の巨人を相手に負けなしの2勝1分で突破を果たすと、パ・リーグを制したオリックスバファローズとの日本シリーズも連日の接戦の末に4勝2敗で日本一の座に駆け上がった。

 いわゆる「高津マジック」とも称される指揮官の采配の妙として、今年の短期決戦で光り輝いたのは投手起用であろう。ポストシーズンでは思い切って20歳・奥川恭伸選手、24歳・高橋奎二選手、28歳・原樹里選手をそれぞれ1、2、3番手として先発ローテーションに組み込み、20代の若い力の勢いを買った。

 今季開幕投手を任され、チームトップタイの9勝をマークした31歳・小川秦弘選手、41歳・石川雅規選手の経験を重宝してどこかローテの頭の辺りに組み込みたくもなるところだが、このベテラン2人は日本シリーズ第4、5戦まで〝温存〟。指揮官が伊藤智仁投手コーチとともに練り上げた策は結果として大きく奏功し、見事に実を結んだ。

 こうした投手起用の「高津マジック」の中において、今季プロ5年目となった高橋選手が飛躍の時を迎えたことは特筆すべきポイントの1つに挙げられる。CSファイナルSで巨人を相手に6回無失点、日本シリーズ第2戦でも133球の力投でオリックスの好投手・宮城大弥選手との左腕対決を制しプロ初完投・初完封勝利。今年のレギュラーシーズンでも開幕二軍スタートとなりながら6月に一軍昇格を果たすと、長年の課題だった制球力が大きく安定し〝ゾーンの中で暴れるボール〟を操る術を身につけ、後半戦以降は見違えるような投球内容へと変貌を遂げた。

選手を成長させた〝情報統制〟

 長きに渡って伸び悩んでいたこともあって一時期はチーム内でも「ここまでのレベル」などと揶揄され、半分諦められかけていた立ち位置から這い上がってきたのは高橋選手本人の弛まぬ努力とド根性、それに伊藤投手コーチらピッチングスタッフの助言があったのは明々白々だ。


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